《機械》〈同期機〉[R06上:問5]同期電動機の自己始動法に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

回転界磁形同期電動機が停止している状態で,固定子巻線に対称三相交流電圧を印加すると回転磁界が生じる。しかし,励磁された回転子磁極が受けるトルクは,同じ大きさで向きが交互に変わるので,その平均トルクは零になり電動機は起動しない。これを改善するために,回転子の磁極面に\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)を施す。これは,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)と同じ起動原理を利用したもので,誘導トルクによって電動機を起動させる。

起動時には,回転磁束によって誘導される高電圧によって絶縁が破壊するおそれがあるので,\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)を抵抗で短絡して起動する。回転子の回転速度が同期速度に近づくと,この短絡を切り放し\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)で励磁すると,回転子は同期速度に引き込まれる。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  補償巻線  &  巻線形誘導電動機  &  界磁巻線  &  交 流  \\
\hline
(2) &  制動巻線  &  かご形誘導電動機  &  界磁巻線  &  直 流  \\
\hline
(3) &  制動巻線  &  巻線形誘導電動機  &  界磁巻線  &  交 流  \\
\hline
(4) &  制動巻線  &  かご形誘導電動機  &  固定子巻線  &  直 流  \\
\hline
(5) &  補償巻線  &  かご形誘導電動機  &  固定子巻線  &  直 流  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

同期電動機の自己始動法に関する問題です。
少し突っ込んだ内容の出題であるため,受験生には少し厳しい問題であったかもしれません。裏返せば本問以上の深い内容は出題されにくいので,本問の内容を理解しておけば十分かと思います。同期電動機の始動法は他にも種類がありますので平成22年問5等を学習してみて下さい。
本問は平成17年問4からの再出題となります。

1.自己始動法
回転子の磁極面に施した制動巻線を利用して始動する方式です。制動巻線を誘導電動機の二次巻線のようにして,誘導電流と磁界により発生するトルクにより始動させます。制動巻線はかご形誘導電動機と同様な構造をしています。
同期速度付近に達したら,界磁電流に直流励磁を与えて,引込みトルクによって同期化します。
始動時には,回転磁束により界磁巻線に高電圧が誘導され,絶縁破壊のおそれがあるため,適当な抵抗を介して界磁巻線を短絡しておく必要があります。


出典:電験教室 HP 【解説】同期電動機の出力・トルク・特性について
URL:https://momoyoshiblog.com/douki-dendouki/

【解答】

解答:(2)
(ア)
ワンポイント解説「1.自己始動法」の通り,回転子の磁極面に施すのは制動巻線となります。

(イ)
ワンポイント解説「1.自己始動法」の通り,制動巻線を利用することによる始動はかご形誘導電動機と同じ起動原理となります。

(ウ)
ワンポイント解説「1.自己始動法」の通り,起動時には,回転磁束によって誘導される高電圧によって絶縁が破壊するおそれがあるので,界磁巻線を抵抗で短絡して起動します。

(エ)
ワンポイント解説「1.自己始動法」の通り,回転子の回転速度が同期速度に近づくと,この短絡を切り放し直流で励磁することで,回転子は同期速度に引き込まれます。