《理論》〈電子理論〉[H21:問12]磁界中及び電界中の電子の運動に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

図1のように,真空中において強さが一定で一様な磁界中に,速さ\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \)の電子が磁界の向きに対して\( \ \theta \ \mathrm {[°]} \ \)の角度\( \ \left( 0 \ \mathrm {[°]}<\theta \ \mathrm {[°]}<90 \ \mathrm {[°]}\right) \ \)で突入した。この場合,電子は進行方向にも磁界の向きにも\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)方向の電磁力を常に受けて,その軌跡は,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)を描く。

次に,電界中に電子を置くと,電子は電界の向きと\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)方向の静電力を受ける。また,図2のように,強さが一定で一様な電界中に,速さ\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \)の電子が電界の向きに対して\( \ \theta \ \mathrm {[°]} \ \)の角度\( \ \left( 0 \ \mathrm {[°]}<\theta \ \mathrm {[°]}<90 \ \mathrm {[°]}\right) \ \)で突入したとき,その軌跡は,\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)を描く。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  反 対  &  らせん  &  反 対  &  放物線  \\
\hline
(2) &  直 角  &  円    &  同 じ  &  円    \\
\hline
(3) &  同 じ  &  円    &  直 角  &  放物線  \\
\hline
(4) &  反 対  &  らせん  &  同 じ  &  円    \\
\hline
(5) &  直 角  &  らせん  &  反 対  &  放物線  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

真空中の電子の運動に関する問題です。
電界と磁界,非常に似た性質もありますが,電荷に加わる力は全く違います。違いを理解するには非常に良い問題と思いますので,必ず理解しておくようにしましょう。

1.電荷に働く力の大きさ
一様な電界\( \ E \ \mathrm {[V / m]} \ \)が電荷\( \ q \ \mathrm {[C]} \ \)にかかっているとき,この電荷\( \ q \ \mathrm {[C]} \ \)に働く力の大きさ\( \ F \ \mathrm {[N]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&qE \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。電子の場合は,電荷がマイナスなので,電界と逆方向の力が加わります。

2.フレミングの左手の法則
中指を電流の向き,人差し指を磁界の向きに合わせると,親指の方向に力が働くという法則で,頭文字を取って「電磁力」と覚えます。
磁束密度の大きさ\( \ B \ \mathrm {[T]} \ \),電子の速度\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \),電子の電荷を\( \ e \ \mathrm {[C]} \ \)とすると,電子にかかるローレンツ力\( \ F \ \mathrm {[N]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&evB \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。電子の場合,動く向きが電流の向きと逆になるので,中指の向きに注意するようにしましょう。

【解答】

解答:(5)
(ア)
図1の電子の速度を磁界と同方向成分\( \ v \cos \theta \ \)と磁界と直角方向成分\( \ v \sin \theta \ \)に分けると,電子に力が加わるのは直角成分のみであり,その向きはワンポイント解説「2.フレミングの左手の法則」の通り,手前から奥の向きとなります。

(イ)
磁界と直角方向成分\( \ v \sin \theta \ \)に対しては常に動く方向と直角方向に力が加わり円運動,磁界と同方向成分\( \ v \cos \theta \ \)に対しては電子に力が加わらないため一定の速度\( \ v \cos \theta \ \)で動きます。したがって,全体としてはらせん運動となります。

(ウ)
ワンポイント解説「1.電荷に働く力の大きさ」の通り,電界中に電子を置くと,電子は電界の向きと反対方向に静電力を受けます。

(エ)
図2-1に示すように,電子は常に上向きの力を受けるため,放物線を描くようになります。