《理論》〈電子理論〉[H21:問11]真性半導体と不純物半導体の特徴に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

半導体に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。

(1) シリコン\( \ \left( \mathrm {Si} \right) \ \)やゲルマニウム\( \ \left( \mathrm {Ge} \right) \ \)の真性半導体においては,キャリヤの電子と正孔の数は同じである。

(2) 真性半導体に微量の\( \ \mathrm {III} \ \)族又は\( \ \mathrm {V} \ \)族の元素を不純物として加えた半導体を不純物半導体といい,電気伝導度が真性半導体に比べて大きくなる。

(3) シリコン\( \ \left( \mathrm {Si} \right) \ \)やゲルマニウム\( \ \left( \mathrm {Ge} \right) \ \)の真性半導体に\( \ \mathrm {V} \ \)族の元素を不純物として微量だけ加えたものを\( \ \mathrm {p} \ \)形半導体という。

(4) \( \ \mathrm {n} \ \)形半導体の少数キャリヤは正孔である。

(5) 半導体の電気伝導度は温度が下がると小さくなる。

【ワンポイント解説】

真性半導体や不純物半導体の特徴に関する問題です。
不純物という名称から真性半導体の方が電気伝導度が良さそうな印象を受けますが,キャリヤの数が不純物半導体の方が圧倒的に多いため電流は流れやすいです。\( \ \mathrm {p} \ \)形半導体は\( \ \mathrm {positive} \ \)で多数キャリヤが正孔(+),\( \ \mathrm {n} \ \)形半導体は\( \ \mathrm {negative} \ \)で多数キャリヤが電子(-)となります。

1.真性半導体
正孔濃度と電子濃度が同じである半導体で,周期表で\( \ 4 \ \)価の原子であるケイ素\( \ \mathrm {Si} \ \)やゲルマニウム\( \ \mathrm {Ge} \ \)の事を指します。
常温ではキャリア濃度があまり高くなく,抵抗率も高いため絶縁体に近い特性がありますが,光や熱等のエネルギーを加えると,誘起される電子の数が増え,導電性が上がる性質があります。

2.不純物半導体
真性半導体に\( \ 5 \ \)価のリン\( \ \mathrm {P} \ \)やヒ素\( \ \mathrm {As} \ \)等(ドナー)を混ぜる(ドープする)ことで,電子が余る状態を作り,余った電子が導通することで,真性半導体よりも電気が流れやすくなったもの,もしくは,真性半導体に\( \ 3 \ \)価のホウ素\( \ \mathrm {B} \ \)やガリウム\( \ \mathrm {Ga} \ \)等(アクセプタ)を混ぜる(ドープする)ことで,正孔ができる状態を作り,正孔が導通することで,真性半導体よりも電気が流れやすくなったものを言います。電子や正孔をキャリヤと言い,多くあるキャリヤを多数キャリヤと言います。
電子を多数キャリヤとする半導体を\( \ \mathrm {n} \ \)形半導体,正孔を多数キャリヤとする半導体を\( \ \mathrm {p} \ \)形半導体と言います。


出典:LED発光ダイオードの基礎知識 HP
http://www.optdevice.jp/semiconductor/intrinsic.html

【解答】

解答:(3)
(1):正しい
問題文の通り,真性半導体は光や熱等のエネルギーを加えることにより電子-正孔対ができるため,キャリヤの電子と正孔の数は同じとなります。

(2):正しい
ワンポイント解説「2.不純物半導体」の通り,不純物半導体は真性半導体に微量の\( \ \mathrm {III} \ \)族又は\( \ \mathrm {V} \ \)族の元素を加えた半導体で,キャリヤ濃度が高くなるため,電気伝導度が真性半導体に比べて大きくなります。

(3):誤り
ワンポイント解説「2.不純物半導体」の通り,真性半導体に微量の\( \ \mathrm {V} \ \)族の元素を加えた半導体を\( \ \color {red}{\underline {\mathrm {n}}} \ \)形半導体といいます。

(4):正しい
問題文の通り,\( \ \mathrm {n} \ \)形半導体の多数キャリヤは電子,少数キャリヤは正孔となります。

(5):正しい
ワンポイント解説「1.真性半導体」の通り,半導体は温度が上がると電子-正孔対が増えるため,電気伝導度が上がります。したがって,電気伝導度は温度が下がると小さくなります。