《理論》〈電子理論〉[H23:問11]電界効果トランジスタ(MOSFET)に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,電界効果トランジスタに関する記述である。

図に示す\( \ \mathrm {MOS} \ \)電界効果トランジスタ(\( \ \mathrm {MOSFET} \ \))は,\( \ \mathrm {p} \ \)形基板表面に\( \ \mathrm {n} \ \)形のソースとドレーン領域が形成されている。また,ゲート電極は,ソースとドレーン間の\( \ \mathrm {p} \ \)形基板表面上に薄い酸化膜の絶縁層(ゲート酸化膜)を介して作られている。ソース\( \ \mathrm {S} \ \)と\( \ \mathrm {p} \ \)形基板の電位を接地電位とし,ゲート\( \ \mathrm {G} \ \)にしきい値電圧以上の正の電圧\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)を加えることで,絶縁層を隔てた\( \ \mathrm {p} \ \)形基板表面近くでは,\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)が除去され,チャネルと呼ばれる\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)の薄い層ができる。これによりソース\( \ \mathrm {S} \ \)とドレーン\( \ \mathrm {D} \ \)が接続される。この\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)を上昇させるとドレーン電流\( \ I_{\mathrm {D}} \ \)は\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)する。

また,この\( \ \mathrm {FET} \ \)は\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)チャネル\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)と呼ばれている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  正 孔  &  電 子  &  増 加  &  \mathrm {n}  \\
\hline
(2) &  電 子  &  正 孔  &  減 少  &  \mathrm {p}  \\
\hline
(3) &  正 孔  &  電 子  &  減 少  &  \mathrm {n}  \\
\hline
(4) &  電 子  &  正 孔  &  増 加  &  \mathrm {n}  \\
\hline
(5) &  正 孔  &  電 子  &  増 加  &  \mathrm {p}  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)の導通原理に関する問題です。
テキストによっては難しく記載してあるものもあるためわからない受験生も多くいらっしゃいますが,一度納得してしまえば忘れにくい内容となるので,本問で確実に理解しておくようにしましょう。

1.\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)の動作原理
\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)(\( \ \mathrm {n} \ \)チャネル)は,図1のように\( \ \mathrm {p} \ \)形基板表面に\( \ \mathrm {n} \ \)形のソース\( \ \mathrm {S} \ \)とドレーン\( \ \mathrm {D} \ \)を形成し,ゲート\( \ \mathrm {G} \ \)を電子や正孔を通さない薄いゲート酸化膜を介して形成する素子です。

図1のように,ゲート-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)が零のとき,ドレーン-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {DS}} \ \)を加えても,\( \ \mathrm {p} \ \)形基板によりドレーン-ソース間は導通せず,ドレーン電流\( \ I_{\mathrm {D}} \ \)は流れません。
図2のように,ゲート-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)を加えると,ゲート電極に電子が引き寄せられ,疑似的な\( \ \mathrm {n} \ \)形の層ができ,ドレーン-ソース間が導通するようになり,ドレーン電流\( \ I_{\mathrm {D}} \ \)が流れるようになります。そのままドレーン-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {DS}} \ \)を大きくしていっても,ある値を上限に\( \ \mathrm {n} \ \)層の導通路の幅が支配的となり,ドレーン電流\( \ I_{\mathrm {D}} \ \)は大きくなりません。
一方,ゲート-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)を大きくすると,\( \ \mathrm {n} \ \)層の導通路が大きくなるので,ドレーン電流\( \ I_{\mathrm {D}} \ \)が大きくなります。
したがって,ドレーン電流\( \ I_{\mathrm {D}} \ \)はゲート-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)でコントロールできることがわかります。

【解答】

解答:(1)
(ア)
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)の動作原理」の通り,ゲート-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)を加えると,ゲート電極付近の\( \ \mathrm {p} \ \)形基板の多数キャリヤである正孔が除去されます。

(イ)
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)の動作原理」の通り,ゲート-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)を加えると,ゲート電極付近の\( \ \mathrm {p} \ \)形基板の少数キャリヤである電子が引き寄せられ,薄い\( \ \mathrm {n} \ \)形の層が形成されます。

(ウ)
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)の動作原理」の通り,ゲート-ソース間電圧\( \ V_{\mathrm {GS}} \ \)を大きくすると,引き寄せられる電子の数が増えるので,\( \ \mathrm {n} \ \)形の層が大きくなり,ドレーン電流\( \ I_{\mathrm {D}} \ \)が増加します。

(エ)
このような\( \ \mathrm {p} \ \)→\( \ \mathrm {n} \ \)となる\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)は\( \ \mathrm {n} \ \)チャネル\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)と呼ばれます。