《理論》〈電気及び電子計測〉[R05上:問16]電圧計の異なる端子を使用した抵抗値の導出に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

内部抵抗が\( \ 15 \ \mathrm {k\Omega } \ \)の\( \ 150 \ \mathrm {V} \ \)測定端子と内部抵抗が\( \ 10 \ \mathrm {k\Omega } \ \)の\( \ 100 \ \mathrm {V} \ \)測定端子をもつ永久磁石可動コイル形直流電圧計がある。この直流電圧計を使用して,図のように,電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)の定電流源で電流を流して抵抗\( \ \mathrm {R} \ \)の両端の電圧を測定した。

測定Ⅰ:\( \ 150 \ \mathrm {V} \ \)の測定端子で測定したところ,直流電圧計の指示値は\( \ 101.0 \ \mathrm {V} \ \)であった。

測定Ⅱ:\( \ 100 \ \mathrm {V} \ \)の測定端子で測定したところ,直流電圧計の指示値は\( \ 99.00 \ \mathrm {V} \ \)であった。

次の(a)及び(b)の問に答えよ。

ただし,測定に用いた機器の指示値に誤差はないものとする。

(a) 抵抗\( \ \mathrm {R} \ \)の抵抗値\( \ [\Omega ] \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ 241 \ \)  (2) \( \ 303 \ \)  (3) \( \ 362 \ \)  (4) \( \ 486 \ \)  (5) \( \ 632 \ \)

(b) 電流\( \ I \ \)の値\( \ \mathrm {[A]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ 0.08 \ \)  (2) \( \ 0.17 \ \)  (3) \( \ 0.25 \ \)  (4) \( \ 0.36 \ \)  (5) \( \ 0.49 \ \)

【ワンポイント解説】

電圧計の測定端子の内部抵抗の違いを利用した抵抗値の導出に関する問題です。
特別難解な公式を使用する問題ではありませんが,問題読解と立式,そして計算力が必要となります。
こういう問題が合否を分ける問題となりますので,確実に理解するようにしましょう。
平成30年問18に同じ問題が出題されています。

1.キルヒホッフの法則
キルヒホッフの法則には第1法則と第2法則がありますが,法則を説明できる必要はなく,計算で使いこなせることが重要です。
①第1法則(電流則)
 回路の接続点に流入する電流の和と流出する電流の和が等しい。

 図1で言えば,例えば接続点\( \ \mathrm {A} \ \)において,
\[
\begin{eqnarray}
I &=&I_{1}+I_{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]  となります。

②第2法則(電圧則)
 任意の閉回路において,起電力の総和と抵抗の電圧降下の和は等しい。

 図1で言えば,例えば閉回路\( \ 1 \ \)において,
\[
\begin{eqnarray}
V &=&RI+R_{1}I_{1} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]  となります。

【解答】

(a)解答:(5)
題意に沿って回路を描くと,図2及び図3のようになる。
図2において,並列回路であるから,抵抗\( \ \mathrm {R} \ \)に加わる電圧も\( \ 101.0 \ \mathrm {[V]} \ \)なので,抵抗\( \ \mathrm {R} \ \)の接続点にキルヒホッフの法則の電流則を適用すると,ワンポイント解説「1.キルヒホッフの法則」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {101}{\mathrm {R}}+\frac {101}{15\times 10^{3}} &=&I  ・・・・・・・・・・ ① \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,図3においても同様に考えると,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {99}{\mathrm {R}}+\frac {99}{10\times 10^{3}} &=&I  \   \ ・・・・・・・・・・ ② \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。①,②について\( \ I \ \)を消去して整理すると,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {101}{\mathrm {R}}+\frac {101}{15\times 10^{3}} &=&\frac {99}{\mathrm {R}}+\frac {99}{10\times 10^{3}} \\[ 5pt ] \frac {101}{\mathrm {R}}-\frac {99}{\mathrm {R}} &=&\frac {99}{10\times 10^{3}}-\frac {101}{15\times 10^{3}} \\[ 5pt ] \frac {2}{\mathrm {R}} &=&\left( \frac {99}{10}-\frac {101}{15} \right) \times \frac {1}{10^{3}} \\[ 5pt ] &=&\frac {297-202}{30} \times \frac {1}{10^{3}} \\[ 5pt ] &=&\frac {19}{6} \times \frac {1}{10^{3}} \\[ 5pt ] \mathrm {R}&=&\frac {2\times 6}{19} \times 10^{3} \\[ 5pt ] &≒&631.6 → 632 \ \mathrm {[\Omega ]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(2)
(1)の解答を①に代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
I&=&\frac {101}{\mathrm {R}}+\frac {101}{15\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &=&\frac {101}{631.6}+\frac {101}{15\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &≒&0.167 → 0.17 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。