《理論》〈電子理論〉[R3:問18]トランジスタを用いた発振回路に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

発振回路について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 図1は,ある発振回路のコンデンサを開放し,同時にコイルを短絡した,直流分を求めるための回路図である。図中の電圧\( \ V_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[V]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
 ただし,図中の\( \ V_{\mathrm {BE}} \ \)並びにエミッタ接地トランジスタの直流電流増幅率\( \ h_{\mathrm {FE}} \ \)をそれぞれ\( \ V_{\mathrm {BE}}=0.6 \ \mathrm {[V]} \ \),\( \ h_{\mathrm {FE}}=100 \ \)とする。

 (1) \( \ 3 \ \)  (2) \( \ 4 \ \)  (3) \( \ 5 \ \)  (4)  \( \ 6 \ \)  (5) \( \ 7 \ \)

(b) 図2は,ある発振回路のトランジスタに接続されている,電極間のリアクタンスを示している。ただし,バイアス回路は省略している。この回路が発振するとき,発振周波数\( \ f_{0} \ \mathrm {[kHz]} \ \)はどの程度の大きさになるか,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
 ただし,発振周波数は,図に示されている素子の値のみにより定まるとしてよい。

 (1) \( \ 0.1 \ \)  (2) \( \ 1 \ \)  (3) \( \ 10 \ \)  (4)  \( \ 100 \ \)  (5) \( \ 1 \ 000 \ \)

【ワンポイント解説】

トランジスタを用いた発振回路に関する問題です。
発振回路は正弦波等の電気的振動を出力するための電子回路で,ラジオ等の搬送波として現在でも用いられています。
電験対策としては,発振条件を覚えておけば十分かと思います。

1.発振回路の発振条件
図1の回路において,演算増幅器\( \ A \ \)と帰還回路\( \ \beta \ \)とした時,
  ①\( \ A\beta ≧1 \ \)(振幅条件)
  ②\( \ A\beta \ \)の位相角が零(周波数条件)
を満たすとき,発振回路は発振を継続します。
本問においては接続されているコンデンサとリアクトルで上記②を満たせば発振すると考えれば良いです。

【解答】

(a)解答:(4)
図1-1に示した閉回路に分圧の法則を適用すると,ベース電圧\( \ V_{\mathrm {B}} \ \mathrm {[V]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {B}} &=&\frac {3.0}{6.8+3.0}\times 9 \\[ 5pt ] &≒&2.755 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,\( \ V_{\mathrm {BE}}=0.6 \ \mathrm {[V]} \ \)であるから,エミッタ電圧\( \ V_{\mathrm {E}} \ \mathrm {[V]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {E}} &=&V_{\mathrm {B}}-V_{\mathrm {BE}} \\[ 5pt ] &=&2.755-0.6 \\[ 5pt ] &=&2.155 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。したがって,エミッタ電流\( \ I_{\mathrm {E}} \ \mathrm {[mA]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {E}} &=&\frac {V_{\mathrm {B}}}{1.4\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &=&\frac {2.155}{1.4\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &≒&1.539\times 10^{-3} \ \mathrm {[A]} → 1.539 \ \mathrm {[mA]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。\( \ \displaystyle h_{\mathrm {FE}}=\frac {I_{\mathrm {C}}}{I_{\mathrm {B}}}=100 \ \)及び\( \ I_{\mathrm {E}}=I_{\mathrm {B}}+I_{\mathrm {C}} \ \)より,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {E}} &=&I_{\mathrm {B}}+I_{\mathrm {C}} \\[ 5pt ] &=&\frac {I_{\mathrm {C}}}{100}+I_{\mathrm {C}} \\[ 5pt ] &=&\frac {101}{100}I_{\mathrm {C}} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {C}}&=&\frac {100}{101}I_{\mathrm {E}} \\[ 5pt ] &=&\frac {100}{101}\times 1.539 \\[ 5pt ] &≒&1.524 \ \mathrm {[mA]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,コレクタ電圧\( \ V_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[V]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {C}} &=&9-2.1\times 10^{3}I_{\mathrm {C}} \\[ 5pt ] &=&9-2.1\times 10^{3}\times 1.524\times 10^{-3} \\[ 5pt ] &≒&5.80 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(4)
ワンポイント解説「1.発振回路の発振条件」より,回路が発振するためには,合成のリアクタンスが零とならなければならない。したがって,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {j}2\pi f_{0}\times 5\times 10^{-6}+\frac {1}{\mathrm {j}2\pi f_{0}\times 1\times 10^{-6}}+\frac {1}{\mathrm {j}2\pi f_{0}\times 1\times 10^{-6}} &=&0 \\[ 5pt ] \mathrm {j}2\pi f_{0}\times 5\times 10^{-6}-\mathrm {j}\frac {2}{2\pi f_{0}\times 1\times 10^{-6}} &=&0 \\[ 5pt ] 2\pi f_{0}\times 5\times 10^{-6}-\frac {1}{\pi f_{0}\times 1\times 10^{-6}} &=&0 \\[ 5pt ] 2\pi f_{0}\times 5\times 10^{-6} &=&\frac {1}{\pi f_{0}\times 1\times 10^{-6}} \\[ 5pt ] f_{0}^{2} &=&\frac {1}{2\pi \times 5\times 10^{-6}\times \pi \times 1\times 10^{-6}} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{10\times \left( \pi \times 10^{-6}\right) ^{2}} \\[ 5pt ] f_{0} &=&\frac {1}{\sqrt {10}\pi \times 10^{-6}} \\[ 5pt ] &≒&101 \ 000 \ \mathrm {[Hz]} → 101 \ \mathrm {[kHz]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。