《理論》〈電子理論〉[R06上:問12]平等電界中の電子の運動に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

真空中に置かれた平行電極板間に,直流電圧\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)を加えて平等電界\( \ E \ \mathrm {[V / m]} \ \)を作り,この陰極板に電子を置いた場合,初速零で出発した電子が陽極板に到達したときの速さは,\( \ v \ \mathrm {[m / s]} \ \)となった。このときの電子の運動エネルギーは,電子が陽極板に到達するまでに得るエネルギーに等しいと考えられ,次の式が成立する。
\[
\begin{eqnarray}
\frac {1}{2}mv^{2} &=& \ \fbox {  (ア)  } \ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ただし,電子の電気素量を\( \ e \ \mathrm {[C]} \ \),電子の質量を\( \ m \ \mathrm {[kg]} \ \)とする。

したがって,この式から電子の速さ\( \ v \ \mathrm {[m / s]} \ \)は,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)で表される。

上記の記述中の空白箇所(ア)及び(イ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccc}
& (ア) & (イ) \\
\hline
(1) &  eV  &  \displaystyle \sqrt {\frac {4eV}{m}}  \\
\hline
(2) &  eV  &  \displaystyle \sqrt {\frac {2eV}{m}}  \\
\hline
(3) &  2eV  &  \displaystyle \sqrt {\frac {4eV}{m}}  \\
\hline
(4) &  eE  &  \displaystyle \sqrt {\frac {2eE}{m}}  \\
\hline
(5) &  eE  &  \displaystyle \sqrt {\frac {4eE}{m}}  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

平等電界中の電子の持つエネルギーが変わらないエネルギー保存則を利用して,電子の速さを求める問題です。
計算量も比較的少なくパターンも決まっている問題なので,必ず理解しておきましょう。
本問は平成9年問9からの再出題となります。

1.一様電界中において電子に働く力と電子の持つエネルギー
図1に示すように,一様な電界\( \ E \ \mathrm {[V/m]} \ \)中に電子\( \ -e \ \mathrm {[C]} \ \)があるとき,この電子に働く力の大きさ\( \ F \ \mathrm {[N]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&eE \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で向きは電界の向きと逆向きとなります。この電子を力の向きに逆らって\( \ d \ \mathrm {[m]} \ \)移動させるのに必要な仕事\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
W &=&Fd \\[ 5pt ] &=&eEd \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,電界\( \ E \ \mathrm {[V/m]} \ \)と電位差\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)の関係\( \ V=Ed \ \)より,
\[
\begin{eqnarray}
W &=&eV \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。これは,外力により電子に蓄えられた位置エネルギーと言えます。

2.物体の運動エネルギー(力学)
質量\( \ m \ \mathrm {[kg]} \ \)の物体が,速度\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \)で運動しているときの運動エネルギー\( \ K \ \mathrm {[J]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
K &=&\frac {1}{2}mv^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

解答:(2)
(ア)
ワンポイント解説「1.一様電界中において電子に働く力と電子の持つエネルギー」の通り,電子の持つエネルギー(陽極板に到達するまでに得るエネルギー)は\( \ eV \ \mathrm {[J]} \ \)となります。

(イ)
(ア)の解答式より,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {1}{2}mv^{2}&=&eV \\[ 5pt ] v^{2}&=&\frac {2eV}{m} \\[ 5pt ] v&=&\sqrt {\frac {2eV}{m}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。