《理論》〈電磁気〉[R06上:問3]磁気に関する量とその単位記号の組合せに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

磁気に関する量とその単位記号(\( \ \mathrm {SI} \ \)基本単位及び組立単位による表し方)の組合せとして,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{cll}
&     量 &  単位記号 \\
\hline
(1) &  インダクタンス  &  \mathrm {Wb / A}  \\
\hline
(2) &  磁束  &  \mathrm {V / s}  \\
\hline
(3) &  磁界の強さ  &  \mathrm {A / m}  \\
\hline
(4) &  磁気抵抗  &  \mathrm {H^{-1}}  \\
\hline
(5) &  透磁率  &  \mathrm {H / m}  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

電磁気の公式に沿って各諸量の単位を求める問題です。
一つ一つの公式は紹介しませんが,いずれも重要な公式となりますので,わからないという方はテキスト等を復習しておいて下さい。
類題が平成23年問14に出題されていますので,一緒に学習しておいて下さい。

【解答】

解答:(2)
(1)正しい
コイルの巻き数が\( \ N \ \)であり,電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)を流した時の鎖交磁束が\( \ \phi \ \mathrm {[Wb]} \ \)であった時,自己インダクタンス\( \ L \ \mathrm {[H]} \ \)と鎖交磁束の関係から,
\[
\begin{eqnarray}
LI&=&N\phi \\[ 5pt ] L&=&N\frac {\phi }{I} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるため,インダクタンス\( \ L \ \)の単位は\( \ \mathrm {[Wb/A]} \ \)となります。

(2)誤り
ファラデーの電磁誘導の法則より,巻数\( \ N \ \)のコイルを貫通する磁束\( \ \phi \ \mathrm {[Wb]} \ \)があるとき,コイルに発生する誘導起電力\( \ e \ \mathrm {[V]} \ \)は,磁束の時間変化\( \ \displaystyle \frac {\Delta \phi }{\Delta t} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
e&=&−N\frac {\Delta \phi }{\Delta t} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,これを\( \ \Delta \phi \ \)について整理すると,
\[
\begin{eqnarray}
\Delta \phi &=&−\frac {1}{N}e\Delta t \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,磁束\( \ \phi \ \)の単位は\( \ \underline {\mathrm {[V\cdot s]}} \ \)となります。

(3)正しい
アンペールの法則より,無限長直線電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)が流れているとき,電線から距離\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \)離れた位置での磁界の強さ\( \ H \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
H&=&\frac {I}{2\pi r} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,磁界の強さの単位は\( \ \mathrm {[A / m]} \ \)となります。

(4)正しい
磁気回路のオームの法則より,起磁力\( \ NI \ \mathrm {[A]} \ \),磁束が\( \ \phi \ \mathrm {[Wb]} \ \)であるとき,磁気抵抗\( \ R_{\mathrm {m}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
R_{\mathrm {m}}&=&\frac {NI}{\phi } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。(1)と同様に,
\[
\begin{eqnarray}
LI&=&N\phi \\[ 5pt ] \phi &=&\frac {LI}{N} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があるので,これを磁気回路のオームの法則に代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
R_{\mathrm {m}}&=&\frac {NI}{\phi } \\[ 5pt ] &=&\frac {NI}{\displaystyle \frac {LI}{N} } \\[ 5pt ] &=&\frac {N^{2}}{L} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,\( \ N \ \)の単位は無次元であるため,磁気抵抗\( \ R_{\mathrm {m}} \ \)の単位は\( \ \mathrm {[H^{-1}]} \ \)となります。

(5)正しい
中心長さ\( \ l \ \mathrm {[ m ]} \ \),鉄心の断面積\( \ S \ \mathrm {[ m^{2} ]} \ \)の環状鉄心があるとき,鉄心内の透磁率が\( \ \mu \ \)のときの磁気抵抗\( \ R_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[ H^{-1} ]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
R_{\mathrm {m}} &=&\frac {l}{\mu S} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,これを\( \ \mu \ \)について整理すると,
\[
\begin{eqnarray}
\mu &=&\frac {l}{R_{\mathrm {m}}S} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。単位を検討すると,\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {[m]}}{\mathrm {[ H^{-1} ]}\cdot \mathrm {[m^{2}]}} =\mathrm {[H / m]} \ \)と求められます。