《機械》〈回転機〉[R05上:問7]各種電動機のトルク対速度特性曲線に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

電動機と負荷の特性を,回転速度を横軸,トルクを縦軸に描く,トルク対速度曲線で考える。電動機と負荷の二つの曲線がどのように交わるかを見ると,その回転数における運転が安定か不安定かを判定することができる。誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 負荷トルクよりも電動機トルクが大きいと回転は加速し,反対に電動機トルクよりも負荷トルクが大きいと回転は減速する。回転速度一定の運転を続けるには,負荷と電動機のトルクが一致する安定な動作点が必要である。

(2) 巻線形誘導電動機では,回転速度の上昇とともにトルクが減少するように,二次抵抗を大きくし,大きな始動トルクを発生させることができる。この電動機に回転速度の上昇とともにトルクが増える負荷を接続すると,両曲線の交点が安定な動作点となる。

(3) 電源電圧を一定に保った直流分巻電動機は,回転速度の上昇とともにトルクが減少する。一方,送風機のトルクは,回転速度の上昇とともにトルクが増大する。したがって,直流分巻電動機は,安定に送風機を駆動することができる。

(4) かご形誘導電動機は,回転トルクが小さい時点から回転速度を上昇させるとともにトルクが増大,最大トルクを超えるとトルクが減少する。この電動機に回転速度でトルクが変化しない定トルク負荷を接続すると,電動機と負荷のトルク曲線が\( \ 2 \ \)点で交わる場合がある。この場合,加速時と減速時によって安定な動作点が変わる。

(5) かご形誘導電動機は,最大トルクの速度より高速な領域では回転速度の上昇とともにトルクが減少する。一方,送風機のトルクは,回転速度の上昇とともにトルクが増大する。したがって,かご形誘導電動機は,安定に送風機を駆動することができる。

【ワンポイント解説】

問題文が非常に長く理解するのに時間がかかり,誤りがすぐに見つからない問題です。
本番でこういう問題が出た場合には,一旦飛ばして全部の問題が終わった後解くことをお勧めします。
ただし,令和2年問7に同じ問題が出題されていますので,過去問対策をしっかりとされた方が正答できた問題かと思います。

1.電動機のトルク対速度曲線
電動機のトルクと負荷のトルクはそれぞれ回転速度に対して別の特性を持つため,電動機の回転速度を一定にするための運転動作点はそれぞれのトルクが等しい回転数になります。
そのときのパターンは図1と図2の2パターンがあり,安定か不安定かを判別すると以下のようになります。

①図1の場合
動作点から回転速度が低下すると,以下のようになります。
(1)電動機トルクが増加し,負荷トルクが減少
(2)電動機トルク\( \ > \ \)負荷トルクとなり加速
(3)回転速度は上昇し,再び動作点に戻る

一方,動作点から回転速度が上昇すると,以下のようになります。
(1)電動機トルクが減少し,負荷トルクが増加
(2)電動機トルク\( \ < \ \)負荷トルクとなり減速
(3)回転速度は減少し,再び動作点に戻る

したがって,図1の場合は安定な動作点であることがわかります。

②図2の場合
動作点から回転速度が低下すると,以下のようになります。
(1)電動機トルクが減少し,負荷トルクが増加
(2)電動機トルク\( \ < \ \)負荷トルクとなりさらに減速
(3)回転速度はさらに低下し,動作点には戻らない

一方,動作点から回転速度が上昇すると,以下のようになります。
(1)電動機トルクが増加し,負荷トルクが減少
(2)電動機トルク\( \ > \ \)負荷トルクとなりさらに加速
(3)回転速度はさらに上昇し,動作点には戻らない

したがって,図2の場合は不安定な動作点であることがわかります。

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.電動機のトルク対速度曲線」の通り,負荷トルクよりも電動機トルクが大きいと回転は加速し,反対に電動機トルクよりも負荷トルクが大きいと回転は減速します。回転速度一定の運転を続けるには,負荷と電動機のトルクが一致する図1のような安定な動作点が必要となります。

(2)正しい
図3のように,巻線形誘導電動機では,トルクの比例推移により二次抵抗を接続することでトルクの特性を回転速度の上昇とともにトルクが減少するようにし,大きな始動トルクを発生することができます。また,この電動機に回転速度の上昇とともにトルクが増える負荷を接続すると,図3のように両曲線の交点が安定な動作点となります。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.電動機のトルク対速度曲線」の通り,図1のように,電動機のトルクが回転速度の上昇とともに減少し,負荷の送風機のトルクが回転速度の上昇とともに増加する場合には,安定な動作点で運転が可能となります。

(4)誤り
図4に示すように,一般的なかご形誘導電動機は,回転トルクが小さい時点から回転速度を上昇させるとともにトルクが増大,最大トルクを超えるとトルクが減少します。この電動機に回転速度でトルクが変化しない定トルク負荷を接続すると,図4のように電動機と負荷のトルク曲線が\( \ 2 \ \)点で交わる場合があります。しかしながら,安定か不安定かの違いは回転数には関係しますが,加速時でも減速時でも安定な動作点には関係はありません。

(5)正しい
図5に示すように,かご形誘導電動機は,最大トルクの速度より高速な領域では回転速度の上昇とともにトルクが減少し,送風機のトルクは回転速度の上昇とともにトルクが増大するので,かご形誘導電動機は,安定に送風機を駆動することが可能となります。