《電力・管理》〈変電〉[R05:問5]中性点接地方式の目的と種類及び比較に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

我が国における電力系統の中性点接地方式に関して次の問に答えよ。

(1) 中性点接地の主たる目的について,各\( \ 30 \ \)字程度で二つ述べよ。

(2) 中性点接地方式には,非接地方式,直接接地方式,抵抗接地方式,消弧リアクトル接地方式などがある。

 上記のうち,以下の系統で広く適用されている中性点接地方式を答えよ。

 a) 高圧配電系統

 b) \( \ 154 \ \mathrm {kV} \ \)の送電系統

(3) 直接接地方式との比較において,抵抗接地方式の特徴を合計\( \ 130 \ \)字程度で述べよ。

【ワンポイント解説】

中性点接地方式に関する問題です。
もちろん暗記が得意であれば丸暗記でも良いですが,電気回路的な知識を基に理解をする方が,忘れにくく深い知識に繋がると思います。
合格に向けてはぜひ完答を目指したい問題です。

1.中性点接地方式の種類と特徴
中性点接地方式は以下の\( \ 4 \ \)種類あり,それぞれ特徴が異なります。

①非接地方式
図1のように中性点を接地しない方式で,地絡事故が発生したときに中性点に電流が流れず,対地静電容量のみに流れるため地絡電流が小さいという特徴があります。地絡電流が小さいため,通信線への電磁誘導障害が発生しにくいです。
一方で完全地絡した際には地絡相の電位が零となり,健全相が対地電圧から線間電圧まで\( \ \sqrt {3} \ \)倍上昇してしまいます。
したがって,健全相電位上昇がさほど問題になりにくい配電系統で使用される方式です。

②直接接地方式
図2のように中性点を直接接地する方式で,地絡電流が発生したときに中性点に大きな電流が流れる方式です。中性点に電流が流れやすいため,リレーでの地絡検知がしやすいですが,通信線への電磁誘導障害が発生しやすく,故障点での損傷が発生しやすいです。
一方,中性点の電位が維持されるため,健全相電位上昇が起こりにくいという特徴があります。
したがって,高速遮断に対応している\( \ 187 \ \mathrm {kV} \ \)以上の超高圧系統で採用されています。

③抵抗接地方式
図3のように中性点を抵抗を介して接地する方式で,非接地方式と直接接地方式の中間的な性質を持つ方式です。
抵抗値を調整することで,健全相電位上昇や地絡電流のバランスを取ります。一般に\( \ 100 \ ~ \ 900 \ \mathrm {\Omega} \ \)程度の抵抗値が使用されます。
主に\( \ 22 \ ~ \ 154 \ \mathrm {kV} \ \)系統で採用されています。

④消弧リアクトル接地方式
図4のように中性点をリアクトルを介して接地する方式です。
リアクトルと対地静電容量を並列共振させることで,理論的にはインピーダンスが無限大となり,地絡電流をほぼ零とすることができます。
一方で地絡電流が小さい分,健全相電位上昇は大きくなります。
設置に費用を要することから,近年新たに採用される例は少なく,一部の\( \ 66 \ ~ \ 77 \ \mathrm {kV} \ \)系統で採用されています。

以上の内容をまとめると下表の通りとなります。
高電圧では線路や機器絶縁にコストがかかるので直接接地を採用し,合わせて高速遮断や高速再閉路が採用されている,低電圧では一線地絡時の健全相の電圧上昇がそれほど問題とならないため中性点接地を不要とし,\( \ \Delta -\Delta \ \)結線を採用できるようにしている等,丸暗記ではなくなぜそうするのかも理解しておくと良いと思います。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}
\hline
&  非接地  &  抵抗接地  &  消弧リアクトル接地  &  直接接地  \\
\hline
地絡電流 & 小 & 中 & 最小 & 最大 \\
\hline
健全相電圧上昇 & 大 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
リレー検出 & 難 & 容易 & 難 & 確実 \\
\hline
コスト & 0 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
電圧階級 & \ ~33 \ \mathrm {kV} \ & \ 22~154 \ \mathrm {kV} \ & \ 66~77 \ \mathrm {kV} \ & \ 187 \ \mathrm {kV}~ \ \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

(1)中性点接地の主たる目的
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.中性点接地方式の種類と特徴」の通りです。
・各\( \ 30 \ \)字程度で二つなので,健全相電位上昇と電磁誘導障害の内容を記載しておけば良いかと思います。

(試験センター解答例)
下記①~④など,中性点接地方式の目的についての基本的事項を二つ記載してあればよい。
 ① 地絡事故が発生したときに健全相の電位上昇を抑制する。
 ② 地絡事故が発生したときに保護リレーを確実に動作させる。
 ③ 地絡事故時の事故電流を抑制して電磁誘導障害を軽減する。
 ④ 鉄共振・アーク間欠地絡などの不安定現象を抑制する。

(2)高圧配電系統と\( \ 154 \ \mathrm {kV} \ \)の送電系統で広く適用されている中性点接地方式
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.中性点接地方式の種類と特徴」の通りです。

(試験センター解答)
 a) 非接地方式
 b) 抵抗接地方式

(3)直接接地方式との比較において,抵抗接地方式の特徴
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.中性点接地方式の種類と特徴」の通りです。
・図を頭の中で思い浮かべながら,抵抗接地方式の方が地絡電流が小さく,健全相電位上昇が大きくなることを念頭において記述すると良いかと思います。

(試験センター解答例)
抵抗接地方式は,地絡電流を抑制して通信線への電磁誘導障害を軽減することが目的である。直接接地方式に比べ,\( \ 1 \ \)線地絡電流が小さく保護リレーの事故検出機能は低下する。また,直接接地方式よりも\( \ 1 \ \)線地絡時の健全相の電圧上昇が大きく,線路や機器の絶縁レベルを低減できない。



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