《法規》〈電気施設管理〉[H21:問3]変圧器の信頼性向上対策に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,変圧器の信頼性向上対策に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

a.変圧器事故の未然防止策として,設計・製作及び施工面での品質管理の向上が図られている。

 保守面でも,

 ① 油中ガス分析

 ② 変圧器内部の部分放電により発生する微小パルス又は\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を検出する部分放電検出

などの診断技術も広く用いられ,また,近年では絶縁物の劣化生成物であるフルフラールなどの含有量を基にした劣化診断技術の適用も進められ,事故の未然防止が図られている。

b.変圧器の絶縁油において管理すべき最も重要な特性は絶縁破壊電圧であるが,これは絶縁油中の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)により大きく左右される。長期使用に伴う絶縁油の劣化は全酸化,体積抵抗率などの特性変化となって現れるため,管理基準に従った十分な管理が必要である。

c.大容量の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)変圧器では,絶縁油が変圧器内を冷却循環することにより絶縁紙などの表面や絶縁油中に電荷が蓄積し,絶縁油の耐圧値を超えると局部的に部分放電が発生する流動帯電現象による事故の防止が課題となっている。この現象は,絶縁油及び絶縁材料の処理技術向上に伴い,高い固有抵抗の絶縁油が\( \ \fbox {  (4)  } \ \)された紙絶縁物表面を流れるときに顕著に現れる現象であり,絶縁物への添加剤の適用や変圧器構造,絶縁油の流速などについて総合的に検討を行い対策する必要がある。

また,変圧器の絶縁油中には極微量の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)分が含有されておりこれが銅と反応し銅表面を腐食し化合物を生じさせ,これが油中に浮遊し,導体間等に入り込み,絶縁性能を低下させ,絶縁破壊が生じることがある。これを防止するためには,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)及びその化合物と反応性の低い材料の使用や銅の表面処理などの対策が必要である。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 油 圧     &(ロ)& 空 気     &(ハ)& 送油式 \\[ 5pt ] &(ニ)& 密閉式      &(ホ)& 磁 気     &(ヘ)& 自冷式 \\[ 5pt ] &(ト)& よく含油     &(チ)& 水 分       &(リ)& 超音波 \\[ 5pt ] &(ヌ)& \mathrm {PCB}     &(ル)& けい素     &(ヲ)& よく加湿 \\[ 5pt ] &(ワ)& 窒 素     &(カ)&  よく乾燥     &(ヨ)& 硫 黄 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

変圧器に使用される絶縁油の劣化診断技術に関する問題です。
やや専門性の高い内容であるので,変圧器のメンテナンスをされた経験のある方は比較的馴染みのある内容かと思いますが,座学中心の電験受験生にとっては厳しめの問題であったかもしれません。

1.絶縁油の絶縁劣化診断
絶縁油は新油においては絶縁破壊電圧が高いですが,空気中の水分や不純物が溶け込むことにより劣化し絶縁破壊電圧が低下していきます。したがって,以下の例に示すような絶縁劣化診断を定期的に行う必要があります。

①絶縁破壊電圧試験
絶縁油で満たした容器内で球状電極間にギャップを設け,商用周波数の試験電圧を一定の割合で上昇させその絶縁破壊電圧を測定する試験です。YouTubeの動画でもアップされていますので,見てみるとイメージが沸くかと思います。

②全酸価試験
絶縁油\( \ 1 \ \mathrm {g} \ \)中に含まれる全酸性成分を中和するのに要するアルカリ成分の量で酸化を測定します。
具体的には,トルエンとエタノールを混合した溶剤に入れよく溶解した後,アルカリブルー\( \ \mathrm {6B} \ \)を指示薬として水酸化カリウム溶液の標準エタノール溶液で滴定し,色が青から紫がかった赤に変化したときの水酸化カリウム溶液の分量により酸価度を測定します。

③油中ガス分析
変圧器の絶縁油を採取し溶解している可燃性ガスをクロマトグラフによって検出し,ガスの種類・発生量や増加量,ガスの成分比を基準値と比較することにより,変圧器内部の異常の有無を判定する方法です。
変圧器では,部分放電や局部過熱のような発熱を伴い絶縁油や絶縁紙が熱分解することでガスが発生します。
一酸化炭素,二酸化炭素,メタン,水素等は主に経年劣化で発生し,異常時にはアセチレンが発生します。

④部分放電測定
絶縁油が劣化すると部分放電が発生するため,この微小パルス又は超音波を検出することで部分放電を検出し劣化を診断します。

2.導油式変圧器の流動帯電現象
大容量の変圧器はコイルでの発熱量が多いため,絶縁油をポンプで循環させる導油式(送油式)変圧器を採用しますが,冷却のために絶縁油を循環させる際の摩擦により,固体絶縁物が負電荷,絶縁油が正電荷の静電気で帯電します。これを流動帯電現象といいます。電荷の蓄積量が絶縁油の絶縁破壊電圧を超えると放電が発生し,さらに進展すると変圧器の絶縁破壊に至ります。
流動帯電現象の対策としては,絶縁油の循環流量を抑える,流動帯電抑止剤を絶縁油に添加する,等の対策がとられます。

3.絶縁油に含まれる硫黄分による硫化腐食
絶縁油に含まれる微量の硫黄化合物により,変圧器内部の銅表面を腐食し硫化物を生成し,これが絶縁油中を浮遊し導体間等に入り込み絶縁を低下させる現象です。
硫化腐食の対策としては,精製度の高い絶縁油の採用,硫黄化合物と反応性が低い材料の採用,銅の表面に金属メッキを施す・塗装する等の処理,があります。

【解答】

(1)解答:リ
題意より解答候補は,(ホ)磁気,(リ)超音波,等になると思います。
ワンポイント解説「1.絶縁油の絶縁劣化診断 ④部分放電測定」の通り,変圧器内部の部分放電により微小パルスや超音波が発生するため,部分放電測定ではそれらを検出し診断します。

(2)解答:チ
題意より解答候補は,(イ)油圧,(ロ)空気,(チ)水分,(ワ)窒素,等になると思います。
ワンポイント解説「1.絶縁油の絶縁劣化診断」の通り,絶縁油の絶縁破壊電圧は絶縁油中の水分により大きく左右されます。

(3)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)送油式,(ニ)密閉式,(ヘ)自冷式,になると思います。
ワンポイント解説「2.導油式変圧器の流動帯電現象」の通り,導油式(送油式)変圧器を採用することで,絶縁油が循環することにより流動帯電現象が発生します。

(4)解答:カ
題意より解答候補は,(ト)よく含油,(ヲ)よく加湿,(カ) よく乾燥,になると思います。
一般に静電気はよく乾燥された紙絶縁物表面を流れるときに発生しやすいです。

(5)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ヌ)\( \ \mathrm {PCB} \ \),(ル)けい素,(ワ)窒素,(ヨ)硫黄,等になると思います。
ワンポイント解説「3.絶縁油に含まれる硫黄分による硫化腐食」の通り,銅と反応し銅表面を腐食するのは絶縁油中の硫黄分によるものとなります。



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