《電力》〈送電〉[H20:問7]送配電線路や変電機器等におけるコロナ障害に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

送配電線路や変電機器等におけるコロナ障害に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。

(1) 導体表面にコロナが発生する最小の電圧はコロナ臨界電圧と呼ばれる。その値は,標準の気象条件(気温\( \ 20 \ \mathrm {[℃]} \ \),気圧\( \ 1 \ 013 \ \mathrm {[hPa]} \ \),絶対湿度\( \ 11 \ \mathrm {[g / m^{3}]} \ \))では,導体表面での電位の傾きが波高値で約\( \ 30 \ \mathrm {[kV / cm]} \ \)に相当する。

(2) コロナ臨界電圧は,気圧が高くなるほど低下し,また,絶対温度が高くなるほど低下する。

(3) コロナが発生すると,電力損失が発生するだけでなく,導体の腐食や電線の振動などを生じるおそれもある。

(4) コロナ電流には高周波成分が含まれるため,コロナの発生は可聴雑音や電波障害の原因にもなる。

(5) 電線間隔が大きくなるほど,また,導体の等価半径が大きくなるほどコロナ臨界電圧は高くなる。このため,相導体の多導体化はコロナ障害対策として有効である。

【ワンポイント解説】

コロナ障害の特徴に関する問題です。
専門書等を見るとコロナ臨界電圧に関する数式等が掲載されていますが,電験では出題されないため概要を掴んでおくことが重要です。放電と言っても雷やアーク放電のようなイメージではなく,ジリジリとわずかに放電しているような現象となります。

1.コロナ放電
超高圧電線において,電線の表面から生じる電界が空気の絶縁耐力を超えた時,絶縁破壊されて放電する現象です。
電線が細いほど電界の集中が起きやすく,気圧が低いほど空気を電離するエネルギーが少なくなるため,コロナ放電が発生しやすいです。また,湿度が高い場合も発生がしやすくなります。
コロナ放電が発生すると,コロナ損が発生するとともに,近傍での誘導障害や通信障害,電線の腐食,ジリジリとした騒音,コロナ振動等の障害が生じます。

2.コロナ放電の対策
コロナ放電に対する対策は以下のような方法があります。
 ①多導体方式を採用する → 等価断面積が大きくなる
 ②電線の太線化
 ③取付金具等での突起部をなくす

【解答】

解答:(2)
(1)正しい
問題文の通り,導体表面にコロナが発生する最小の電圧はコロナ臨界電圧と呼ばれ,その値は,標準の気象条件(気温\( \ 20 \ \mathrm {[℃]} \ \),気圧\( \ 1 \ 013 \ \mathrm {[hPa]} \ \),絶対湿度\( \ 11 \ \mathrm {[g / m^{3}]} \ \))では,導体表面での電位の傾きが波高値で約\( \ 30 \ \mathrm {[kV / cm]} \ \)に相当します。

(2)誤り
ワンポイント解説「1.コロナ放電」の通り,コロナ臨界電圧(≒コロナ開始電圧)は,気圧が低くなるほど低下し,絶対温度が高くなるほど低下します。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.コロナ放電」の通り,コロナが発生すると,電力損失が発生するだけでなく,導体の腐食や電線の振動などを生じるおそれもあります。

(4)正しい
ワンポイント解説「1.コロナ放電」の通り,コロナ電流には高周波成分が含まれるため,コロナの発生は可聴雑音や電波障害の原因になります。

(5)正しい
ワンポイント解説「2.コロナ放電の対策」の通り,線間隔が大きくなるほど,また,導体の等価半径が大きくなるほどコロナ臨界電圧は高くなるため,相導体の多導体化はコロナ障害対策として有効です。