《電力》〈変電〉[H20:問6]変電所に設置される機器に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

変電所に設置される機器に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。

(1) 周波数変換装置は,周波数の異なる系統間において,系統又は電源の事故後の緊急応援電力の供給や電力の融通等を行うために使用する装置である。

(2) 線路開閉器(断路器)は,平常時の負荷電流や異常時の短絡電流及び地絡電流を通電でき,遮断器が開路した後,主として無負荷状態で開路して,回路の絶縁状態を保つ機器である。

(3) 遮断器は,負荷電流の開閉を行うだけではなく,短絡や地絡などの事故が生じたとき事故電流を迅速確実に遮断して,系統の正常化を図る機器である。

(4) 三巻線変圧器は,一般に一次側及び二次側を\( \ \mathrm {Y} \ \)結線,三次側を\( \ \Delta \ \)結線とする。三次側に調相設備を接続すれば,送電線の力率調整を行うことができる。

(5) 零相変流器は,三相の電線を一括したものを一次側とし,三相短絡事故や\( \ 3 \ \)線地絡事故が生じたときのみ二次側に電流が生じる機器である。

【ワンポイント解説】

変電所で使用される各機器の特徴に関する問題です。
少し範囲の広い内容からの出題となり受験生を悩ませますが,「~のみ」という選択肢は誤りの文章である場合が多いので,その点に気が付くと正答が探しやすいかと思います。

1.遮断器,開閉器,断路器
断路器,開閉器,遮断器はいずれも開閉設備ですが,用途が異なるためそれぞれの遮断できる電流値が異なります。
電験では細かな構造等は出題されませんが,その違いを理解しておくようにしましょう。
①遮断器
電路の開閉を行う装置の中で,最も大きな電流を開閉できる装置です。
通常運転時の電流のみでなく,短絡・地絡事故時に発生する故障電流を遮断して,事故箇所を切り離す役割があります。
電路開閉時にアークが発生するため,アークを消弧する機能を有し,その方法により,ガス遮断器,真空遮断器,空気遮断器,油遮断器,磁気遮断器等があります。
現在は\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスをアークに吹き付け消弧するガス遮断器と真空バルブ内でアークを拡散させて消弧する真空遮断器が主流であり,電験でも出題が多いのはガス遮断器真空遮断器に関する内容です。

②開閉器
通常運転時の負荷電流は遮断することは可能ですが,事故時の故障電流は遮断することができない開閉装置です。
発変電所等の特別高圧ではなく,配電線路での開閉に使用されることが多い設備です。
気中開閉器\( \ \left( \mathrm {PAS} \right) \ \)や真空開閉器\( \ \left( \mathrm {VCS} \right) \ \),ガス開閉器\( \ \left( \mathrm {PGS} \right) \ \)等があります。
電験では配電の内容である,高圧カットアウトや区分開閉器に関する問題が出題されることが多いです。

③断路器
通電時には開閉できず,電流が流れていないときに開閉可能な開閉装置です。ただし,変圧器の励磁電流等の小さな電流は開閉することが可能です。
電路の保守作業を行う際等に作業箇所を切り離すために開閉することが多いです。
遮断器とセットで使用されることが多く,送電停止時には遮断器を開放してから断路器を開放し,送電開始時には断路器を投入してから遮断器を投入します。

2.変圧器の結線方式
①\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線
図1のような結線方式で,\( \ \Delta \ \)結線を持っていないため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができず,二次側の誘導起電力にひずみが発生してしまいます。
したがって,通常この方式を利用する時には,三次側に\( \ \Delta \ \)結線を設け,\( \ \mathrm {Y-Y-\Delta } \ \)結線として利用します。

②\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線
図2のような結線方式で,一次二次側とも\( \ \Delta \ \)結線がなされているため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができ,二次側の誘導起電力はひずみのない正弦波が出力されます。
一次二次電圧間に位相差がなく,単相変圧器\( \ 3 \ \)台を利用した場合,\( \ 1 \ \)つの変圧器が故障しても\( \ \mathrm {V-V} \ \)結線として運転を継続することが可能となります。
一方で,中性点を持たないため,中性点接地を行う場合,接地用変圧器を使用する必要があります。

③\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線もしくは\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線
図3のような結線方式で,\( \ \mathrm {Y} \ \)結線側では中性点接地,\( \ \Delta \ \)結線側では第\( \ 3 \ \)調波を還流することができるので,双方の特長をどちらも利用できる方式と言えます。
しかしながら,一次二次の電圧に\( \ 30° \ \)の位相差を生じてしまうので,変圧器の並行運転の際には角変位に注意する必要があります。
一般に昇圧用には\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線,降圧用には\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線を使用します。

④\( \ \mathrm {Y-Y-\Delta } \ \)結線
一次二次間に位相差がなく中性点接地ができるという\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線の特長,及び三次側に\( \ \Delta \ \)結線がなされているため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができるという\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)の特長を併せ持ったような結線方式となります。

⑤\( \ \mathrm {V-V} \ \)結線
単相変圧器\( \ 3 \ \)台を利用して\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線で運転している場合に,\( \ 1 \ \)台の変圧器が故障して運転継続する場合に利用します。
また,あらかじめ設備を小さくしておき,将来増強することができるように,この方式が用いられることもあります。
設備利用率が容量の\( \ 86.6 \ % \ \left( \displaystyle \frac {\sqrt {3}}{2}\right) \)が最大で,出力は\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線の\( \ 57.7 \ % \ \left( \displaystyle \frac {1}{\sqrt {3}}\right) \)が最大となります。

3.零相変流器
図6のように主回路を三相一括で励磁し,二次側に合計電流に比例した電流を出力する機器です。通常時(三相平衡時)は二次側には電流は発生しませんが,\( \ 1 \ \)線地絡事故時等三相不平衡となった場合に二次側に電流が流れます。二次側に地絡継電器等を接続すれば,地絡事故を検出することが可能です。

4.周波数変換装置
日本は東日本が\( \ 50 \ \mathrm {[Hz]} \ \),西日本が\( \ 60 \ \mathrm {[Hz]} \ \)で運用されているため,一方の電力系統からもう一方の電力系統に電力を融通する際には周波数変換所が必要となります。
周波数変換はそのままでは困難なので,図7に示すように,一旦コンバータで直流に変換した後,インバータで交流に変換します。

【解答】

解答:(5)
(1)正しい
ワンポイント解説「4.周波数変換装置」の通り,周波数変換装置は,周波数の異なる系統間(\( \ 50 \ \mathrm {Hz} \ \)と\( \ 60 \ \mathrm {Hz} \ \))において,系統又は電源の事故後の緊急応援電力の供給や電力の融通等を行うために使用する装置です。

(2)正しい
ワンポイント解説「1.遮断器,開閉器,断路器」の通り,線路開閉器(断路器)は,平常時の負荷電流や異常時の短絡電流及び地絡電流を通電でき,無負荷状態で開路して,回路の絶縁状態を保つ機器となります。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.遮断器,開閉器,断路器」の通り,遮断器は,負荷電流の開閉を行うのに合わせ,短絡や地絡などの事故が生じたとき事故電流を迅速確実に遮断して,系統の正常化を図る機器となります。

(4)正しい
ワンポイント解説「2.変圧器の結線方式」の通り,三巻線変圧器は,一般に一次側及び二次側を\( \ \mathrm {Y} \ \)結線,三次側を\( \ \Delta \ \)結線とします。三次側には調相設備を接続することも多く,送電線の力率調整を行うことができます。

(5)誤り
ワンポイント解説「3.零相変流器」の通り,零相変流器は,三相の電線を一括したものを一次側とし,\( \ 1 \ \)線地絡事故等の不平衡電流が流れた時に二次側に電流が生じる機器となります。