《電力》〈変電〉[H29:問7]変圧器のY-Y結線方式の特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,変圧器の\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線方式の特徴に関する記述である。

一般に,変圧器の\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線は,一次,二次側の中性点を接地でき,\( \ 1 \ \)線地絡などの故障に伴い発生する\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)の抑制,電線路及び機器の絶縁レベルの低減,地絡事故時の\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)の確実な動作による電線路や機器の保護等,多くの利点がある。
一方,相電圧は\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)を含むひずみ波形となるため,中性点を接地すると,\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)電流が線路の静電容量を介して大地に流れることから,通信線への\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)障害の原因となる等の欠点がある。このため,\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)による三次巻線を設けて,これらの欠点を解消する必要がある。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) &  異常電流  &  避雷器  &  第二調波  &  静電誘導  &  \Delta \ 結線  \\
\hline
(2) &  異常電圧  &  保護リレー  &  第三調波  &  電磁誘導  &  \mathrm {Y} \ 結線  \\
\hline
(3) &  異常電圧  &  保護リレー  &  第三調波  &  電磁誘導  &  \Delta \ 結線  \\
\hline
(4) &  異常電圧  &  避雷器  &  第三調波  &  電磁誘導  &  \Delta \ 結線  \\
\hline
(5) &  異常電流  &  保護リレー  &  第二調波  &  静電誘導  &  \mathrm {Y} \ 結線  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

結線方式ではキーワードとして第三調波電流があります。Y-Y結線は第三調波を還流させることができないので,誘導起電力にひずみが生じてしまいます。従って,\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線ではなく\( \ \Delta \ \)巻線を加えた\( \ \mathrm {Y-Y-\Delta }\)結線が用いられます。

1.変圧器の結線方式
①\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線
図1のような結線方式で,\( \ \Delta \ \)結線を持っていないため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができず,二次側の誘導起電力にひずみが発生してしまいます。
したがって,通常この方式を利用する時には,三次側に\( \ \Delta \ \)結線を設け,\( \ \mathrm {Y-Y-\Delta } \ \)結線として利用します。

②\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線
図2のような結線方式で,一次二次側とも\( \ \Delta \ \)結線がなされているため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができ,二次側の誘導起電力はひずみのない正弦波が出力されます。
一次二次電圧間に位相差がなく,単相変圧器\( \ 3 \ \)台を利用した場合,\( \ 1 \ \)つの変圧器が故障しても\( \ \mathrm {V-V} \ \)結線として運転を継続することが可能となります。
一方で,中性点を持たないため,中性点接地を行う場合,接地用変圧器を使用する必要があります。

③\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線もしくは\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線
図3のような結線方式で,\( \ \mathrm {Y} \ \)結線側では中性点接地,\( \ \Delta \ \)結線側では第\( \ 3 \ \)調波を還流することができるので,双方の特長をどちらも利用できる方式と言えます。
しかしながら,一次二次の電圧に\( \ 30° \ \)の位相差を生じてしまうので,変圧器の並行運転の際には角変位に注意する必要があります。
一般に昇圧用には\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線,降圧用には\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線を使用します。

④\( \ \mathrm {Y-Y-\Delta } \ \)結線
一次二次間に位相差がなく中性点接地ができるという\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線の特長,及び三次側に\( \ \Delta \ \)結線がなされているため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができるという\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)の特長を併せ持ったような結線方式となります。

⑤\( \ \mathrm {V-V} \ \)結線
単相変圧器\( \ 3 \ \)台を利用して\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線で運転している場合に,\( \ 1 \ \)の変圧器が故障して運転継続する場合に利用します。
また,あらかじめ設備を小さくしておき,将来増強することができるように,この方式が用いられることもあります。
設備利用率が容量の\( \ 86.6 \ % \ \left( \displaystyle \frac {\sqrt {3}}{2}\right) \)が最大で,出力は\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線の\( \ 57.7 \ % \ \left( \displaystyle \frac {1}{\sqrt {3}}\right) \)が最大となります。

【解答】

解答:(3)
(ア)
短絡や地絡等で発生する異常電圧により,短絡電流や地絡電流が発生します。

(イ)
地絡事故時に動作するのは保護リレーです。避雷器は雷等による異常電圧を大地に逃がすものです。

(ウ)
(エ)
(オ)
第三調波を多く含むひずみ波が発生するため,三次巻線には\( \ \Delta \ \)結線を使用します。電磁誘導障害は異常電圧発生時,隣接した通信線に電磁誘導により発生するもので,静電誘導障害は送電線と通信線の静電容量の違いにより発生するものです。