《電力》〈原子力〉[R06上:問4]ウランの核分裂エネルギーと石炭の発熱量の比較に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

\( \ 1 \ \mathrm {g} \ \)のウラン\( \ 235 \ \)が核分裂し,\( \ 0.09 \ \mathrm {%} \ \)の質量欠損が生じたとき,発生するエネルギーを石炭に換算した値\( \ \mathrm {[kg]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,石炭の発熱量を\( \ 25 \ 000 \ \mathrm {kJ / kg} \ \)とする。

 (1) \( \ 32 \ \)  (2) \( \ 320 \ \)  (3) \( \ 1 \ 600 \ \)  (4) \( \ 3 \ 200 \ \)  (5) \( \ 6 \ 400 \ \)

【ワンポイント解説】

ウランの核分裂による核分裂エネルギーと等しいエネルギーを出すために必要な石炭の量を求める問題です。
ウラン\( \ 1 \ \mathrm {g} \ \)に対し,石炭の単位が\( \ \mathrm {[kg]} \ \)と物凄い量の差であることが理解できるかと思います。核分裂エネルギーの式が与えられていないことから出題頻度が少ないと正答率は低くなりますが,類題が令和5年上期問4に出題されていたので,比較的受験生の正答率は高かったと予想されます。
本問は平成16年問4からの再出題となります。

1.エネルギーと質量の関係式
アインシュタインの特殊相対性理論の中でも最もポピュラーな公式の一つで,ある物質に\( \ \Delta m \ \mathrm {[kg]} \ \)の質量欠損があった場合,その物質から発生するエネルギーを\( \ E \ \mathrm {[J]} \ \),光の速度を\( \ c=3.0\times 10^{8} \ \mathrm {[m/s]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&\Delta m c^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があります。

【解答】

解答:(4)
ウラン\( \ 235 \ \)の質量欠損\( \ \Delta m \ \mathrm {[kg]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\Delta m &=&1\times 10^{-3}\times \frac {0.09}{100} \\[ 5pt ] &=&9.0\times 10^{-7} \ \mathrm {[kg]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,ワンポイント解説「1.エネルギーと質量の関係式」より,ウラン\( \ 235 \ \)が発生するエネルギー\( \ E \ \mathrm {[kJ]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&\Delta m c^{2} \\[ 5pt ] &=&9.0\times 10^{-7}\times \left( 3.0\times 10^{8}\right) ^{2} \\[ 5pt ] &=&8.1\times 10^{10} \ \mathrm {[J]} → 8.1\times 10^{7} \ \mathrm {[kJ]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。
一方,石炭を燃焼することによるエネルギー\( \ E \ \mathrm {[kJ]} \ \)は,使用する石炭の使用量を\( \ W \ \mathrm {[kg]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&25 \ 000 W \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があるため,ウラン\( \ 235 \ \)が質量欠損し発生するエネルギーと同じだけの熱量を得るのに必要な石炭の量\( \ W \ \mathrm {[kg]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
8.1\times 10^{7} &=&25 \ 000 W \\[ 5pt ] W &=&\frac {8.1\times 10^{7}}{25 \ 000} \\[ 5pt ] &=&3 \ 240 \ \mathrm {[kg]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。