《法規》〈電気施設管理〉[H20:問11]送電線の許容引張荷重と電線の弛度に関する計算問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

高圧架空電線に硬銅線を使用して,高低差のない場所に架設する場合,電線の設計に伴う許容引張荷重と弛度(たるみ)に関して,次の(a)及び(b)に答えよ。

ただし,径間\( \ 250 \ \mathrm {[m]} \ \),電線の引張強さ\( \ 58.9 \ \mathrm {[kN]} \ \),電線の重量と水平風圧の合成荷重が\( \ 20.67 \ \mathrm {[N / m]} \ \),安全率は\( \ 2.2 \ \)とする。

(a) この電線の許容引張荷重\( \ \mathrm {[kN]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

 (1) \( \ 23.56 \ \)  (2) \( \ 26.77 \ \)  (3) \( \ 29.45 \ \)  (4) \( \ 129.6 \ \)  (5) \( \ 147.3 \ \)

(b) 電線の弛度\( \ \mathrm {[m]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

 (1) \( \ 4.11 \ \)  (2) \( \ 6.04 \ \)  (3) \( \ 6.85 \ \)  (4) \( \ 12.02 \ \)  (5) \( \ 13.71 \ \)

【ワンポイント解説】

送電線の許容引張荷重と電線の弛度を求める問題です。
いずれも公式に数値を代入すれば解ける問題なので,電験の\( \ \mathrm {B} \ \)問題としてはかなり取り組みやすい問題です。ぜひ完答を目指すようにして下さい。
電線の許容引張荷重は本問では与えられていますが,知識として知っておく必要があります。

1.電線の許容引張荷重
電気設備の技術基準の解釈第66条において,許容引張荷重は電線の引張強さから安全率を加味して選定するように規定されており,
\[
\begin{eqnarray}
許容引張荷重 &=&\frac {電線の引張強さ}{安全率} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があります。

2.電線のたるみの公式
図1の通り,径間を\( \ S \ [ \mathrm {m} ] \ \),水平張力\( \ T \ [ \mathrm {N} ] \ \),電線\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)あたりの質量荷重\( \ w \ [ \mathrm {N/m} ] \ \)とすると,電線のたるみ\( \ D \ [\mathrm {m} ] \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
D&=&\frac {wS^{2}}{8T} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

(a)解答:(2)
電線の引張強さ\( \ T_{\mathrm {m}}=58.9 \ \mathrm {[kN]} \ \),安全率\( \ R=2.2 \ \)であるから,許容引張荷重\( \ W_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[kN]} \ \)は,ワンポイント解説「1.電線の許容引張荷重」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
W_{\mathrm {m}} &=&\frac {T_{\mathrm {m}}}{R} \\[ 5pt ] &=&\frac {58.9}{2.2} \\[ 5pt ] &≒&26.77 \ \mathrm {[kN]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(2)
電線の設計に伴うたるみ\( \ D \ [\mathrm {m} ] \ \)は,径間\( \ S=250 \ [ \mathrm {m} ] \ \),水平張力は許容引張荷重と等しく\( \ T=26.77\times 10^{3} \ [ \mathrm {N} ] \ \),電線\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)あたりの荷重\( \ w=20.67 \ [ \mathrm {N/m} ] \ \)なので,ワンポイント解説「2.電線のたるみの公式」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
D&=&\frac {wS^{2}}{8T} \\[ 5pt ] &=&\frac {20.67\times 250^{2}}{8\times 26.77\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &≒&6.03 \ [\mathrm {m} ] \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

<電気設備の技術基準の解釈第66条(抜粋)>
高圧架空電線は、ケーブルである場合を除き、次の各号に規定する荷重が加わる場合における引張強さに対する安全率が、66-1表に規定する値以上となるような弛度により施設すること。

一 荷重は、電線を施設する地方の平均温度及び最低温度において計算すること。

二 荷重は、次に掲げるものの合成荷重であること。

 イ 電線の重量

 ロ 次により計算した風圧荷重

  (イ) 電線路に直角な方向に加わるものとすること。

  (ロ) 平均温度において計算する場合は高温季の風圧荷重とし、最低温度において計算する場合は低温季の風圧荷重とすること。

 ハ 乙種風圧荷重を適用する場合にあっては、被氷荷重

            66-1表
\[
\begin{array}{|c|c|}
\hline
 電線の種類  &  安全率  \\
\hline
 硬銅線又は耐熱銅合金線  &     \color {red}{\underline {2.2}}  \\
\hline
 その他  &     2.5  \\
\hline
\end{array}
\]