《機械》〈回転機〉[H27:問15]誘導電動機の諸計算に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

定格出力\( \ 15 \ \mathrm {kW} \ \),定格電圧\( \ 220 \ \mathrm {V} \ \),定格周波数\( \ 60 \ \mathrm {Hz} \ \),\( \ 6 \ \)極の三相巻線形誘導電動機がある。二次巻線は星形(\( \ \mathrm {Y} \ \))結線でスリップリングを通して短絡されており,各相の抵抗値は\( \ 0.5 \ \Omega \ \)である。この電動機を定格電圧,定格周波数の電源に接続して定格出力(このときの負荷トルクを\( \ T_{\mathrm {n}} \ \)とする)で運転しているときの滑りは\( \ 5 \ % \ \)であった。

計算に当たっては,\( \ \mathrm {L} \ \)形簡易等価回路を採用し,機械損及び鉄損は無視できるものとして,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 速度を変えるために,この電動機の二次回路の各相に\( \ 0.2 \ \Omega \ \)の抵抗を直列に挿入し,上記と同様に定格電圧,定格周波数の電源に接続して上記と同じ負荷トルク\( \ T_{\mathrm {n}} \ \)で運転した。このときの滑りの値\( \ [%] \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ 3.0 \ \)  (2) \( \ 3.6 \ \)  (3) \( \ 5.0 \ \)  (4) \( \ 7.0 \ \)  (5) \( \ 10.0 \ \)

(b) 電動機の二次回路の各相に上記(a)と同様に\( \ 0.2 \ \Omega \ \)の抵抗を直列に挿入したままで,電源の周波数を変えずに電圧だけを\( \ 200 \ \mathrm {V} \ \)に変更したところ,ある負荷トルクで安定に運転した。このときの滑りは上記(a)と同じであった。
 この安定に運転したときの負荷トルクの値\( \ \mathrm{[N\cdot m]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ 99 \ \)  (2) \( \ 104 \ \)  (3) \( \ 106 \ \)  (4) \( \ 109 \ \)  (5) \( \ 114 \ \)  

【ワンポイント解説】

やや計算が複雑な問題ですが,誘導電動機の問題は計算のパターンが少なく,試験にも類題がよく出題されるので,試験日までには確実に理解しておきたいところです。

1.誘導電動機の\( \ \mathrm {L} \ \)形等価回路
誘導電動機の\( \ \mathrm {L} \ \)形等価回路は,図1のようになります。

2.巻線形誘導電動機の比例推移
巻線形誘導電動機においては,トルク一定の下で二次抵抗と滑りが比例するという性質を持ち,これを比例推移と言います。

【解答】

(a)解答:(4)
ワンポイント解説「2.巻線形誘導電動機の比例推移」より,負荷トルク\( \ T_{\mathrm {n}} \ \)のまま,二次抵抗を\( \ 0.5 \ \Omega \ \)から\( \ 0.7 \ \Omega \ \)に変化させたので,このときの滑りの値\( \ s \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {s}{5}&=&\frac {0.7}{0.5}\\[ 5pt ] s&=&7 \ [%] \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(2)
この電動機の同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
N_{\mathrm {s}}&=&\frac {120f}{p} \\[ 5pt ] &=&\frac {120\times 60}{6} \\[ 5pt ] &=&1200 \ \mathrm {[min ^{-1}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,この電動機の初期状態の回転速度\( \ N \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
N&=&N_{\mathrm {s}}(1-s) \\[ 5pt ] &=&1200 \times (1-0.05) \\[ 5pt ] &=&1140 \ \mathrm {[min ^{-1}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。よって,この時の負荷トルク\( \ T_{\mathrm {n}} \ \)は,\( \ P_{\mathrm {n}}=15 \ \mathrm {kW} \ \),\( \ \displaystyle \omega =\frac {2\pi N}{60} \ \)であるから,
\[
\begin{eqnarray}
T_{\mathrm {n}}&=&\frac {P_{\mathrm {n}}}{\omega } \\[ 5pt ] &=&\frac {P_{\mathrm {n}}}{\displaystyle \frac {2\pi N}{60}} \\[ 5pt ] &=&\frac {15\times 10^{3}}{\displaystyle \frac {2\pi \times 1140}{60}} \\[ 5pt ] &≒&125.6 \ \mathrm {[N\cdot m]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。
また,題意より機械損,鉄損は無視できるので,\( \ \mathrm {L} \ \)形等価回路を描くと図2のようになる。
図2より,電動機の二次電流\( \ I \ \)の大きさは,
\[
I=\frac {V_{1}}{\displaystyle \sqrt {\left( r_{1}+\frac {{r_{2}}^{\prime }}{s}\right) ^{2} +\left( x_{1}+{x_{2}}^{\prime } \right) ^{2}}}
\] となるので,二次入力の大きさ\( \ P_{2} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{2}&=&3\frac {r_{2}}{s}I^{2} \\[ 5pt ] &=&\frac {3r_{2}V_{1}^{2}}{\displaystyle s\left[ \left( r_{1}+\frac {{r_{2}}^{\prime }}{s}\right) ^{2} +\left( x_{1}+{x_{2}}^{\prime } \right) ^{2}\right] } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,トルクの大きさ\( \ T \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
T&=&\frac {P_{2}}{\omega } \\[ 5pt ] &=&\frac {3r_{2}V_{1}^{2}}{\displaystyle \omega s\left[ \left( r_{1}+\frac {{r_{2}}^{\prime }}{s}\right) ^{2} +\left( x_{1}+{x_{2}}^{\prime } \right) ^{2}\right] } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,\( \ T∝V^{2} \ \)の関係であることが分かる。
よって,電圧を\( \ 220 \ \mathrm {V} \ \)から\( \ 200 \ \mathrm {V} \ \)に変更したので,安定した時の負荷トルクの値\( \ T \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {T}{T_{\mathrm {n}}}&=&\left( \frac {200}{220 }\right) ^{2} \\[ 5pt ] T&=&\left( \frac {200}{220 }\right) ^{2}T_{\mathrm {n}} \\[ 5pt ] &=&\left( \frac {200}{220 }\right) ^{2}\times 125.6 \\[ 5pt ] &≒&104 \ \mathrm {[N\cdot m]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。