《機械》〈直流機〉[R05下:問1]直流機の電機子反作用とその対策に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

直流機の電機子反作用に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 直流発電機や直流電動機では,電機子巻線に電流を流すと,電機子電流によって電機子周辺に磁束が生じ,電機子電圧を誘導する磁束すなわち励磁磁束が,電機子電流の影響で変化する。これを電機子反作用という。

(2) 界磁電流による磁束のベクトルに対し,電機子電流による電機子反作用磁束のベクトルは,同じ向きとなるため,電動機として運転した場合に増磁作用,発電機として運転した場合に減磁作用となる。

(3) 直流機の界磁磁極片に補償巻線を設け,そこに電機子電流を流すことにより,電機子反作用を緩和できる。

(4) 直流機の界磁磁極の\( \ \mathrm {N} \ \)極と\( \ \mathrm {S} \ \)極の間に補極を設け,そこに設けたコイルに電機子電流を流すことにより,電機子反作用を緩和できる。

(5) ブラシの位置を適切に移動させることで,電機子反作用を緩和できる。

【ワンポイント解説】

直流機の電機子反作用に関する問題です。
電機子反作用は電機子に電流が流れることにより,その周囲に磁束が発生することに起因する事象ですが,計算問題等は特に出題されないので,本問の内容を理解していれば電験対策としては十分かと思います。
本問は令和元年問2からの再出題となります。

1.直流機の電機子反作用
直流機は,図1に示すように,界磁電流により作られる界磁磁束に電機子電流により発生する磁束が合成され,磁束が強め合う部分と磁束が弱め合う部分が発生します。これにより,界磁磁束に乱れが生じます。これを電機子反作用と言います。電機子反作用により以下の現象が発生します。
①主磁束の減少
 強め合う部分では磁気飽和により磁束はそれほど強くならず,弱め合う部分では磁束が弱くなるという交差磁化作用が発生するため,全体として磁束が減少します。
②電気的中性軸の移動
 磁束分布が乱れることで,電気的中性軸が発電機では回転方向と同方向,電動機では逆方向に移動します。
③整流子片での火花の発生
 磁束分布が乱れ,整流子片に起電力が生じ,整流子片間にアークが生じやすくなります。

2.直流機の電機子反作用の対策
直流機の電機子反作用の対策として,補償巻線と補極があります。
①補償巻線
電機子電流に流れる電流の近くに逆方向の電流を流すことで,電機子巻線が作る磁束を打ち消します。具体的には,磁極片に巻線を施し,電機子巻線と直列に接続する方法がとられます。

②補極
主磁極とは別に,幾何学的中性軸上に磁極を設けます。これにより幾何学的中性軸上の磁束を打ち消し,整流時のリアクタンス電圧も打ち消します。

【解答】

解答:(2)
(1)正しい
問題文の通りです。直流発電機や直流電動機では,電機子巻線に電流を流すと,電機子電流によって電機子周辺に磁束が生じ,電機子電圧を誘導する磁束すなわち励磁磁束が,電機子電流の影響で変化します。これは電機子反作用の説明そのものです。

(2)誤り
ワンポイント解説「1.直流機の電機子反作用」の通り,直流機の電機子反作用は増磁作用や減磁作用といった概念ではなく,電機子電流による電機子反作用磁束のベクトルが主磁束を強め合う部分,弱め合う部分が存在し,磁気飽和により強め合う部分の磁束が一定以上強くならないため,全体として界磁電流による磁束が減少してしまうという現象です。

(3)正しい
ワンポイント解説「2.直流機の電機子反作用の対策」の通り,直流機の界磁磁極片に補償巻線を設け,そこに電機子電流を流すことにより,電機子反作用を緩和できます。

(4)正しい
ワンポイント解説「2.直流機の電機子反作用の対策」の通り,直流機の界磁磁極の\( \ \mathrm {N} \ \)極と\( \ \mathrm {S} \ \)極の間に補極を設け,そこに設けたコイルに電機子電流を流すことにより,電気反作用を緩和できます。

(5)正しい
問題文の通り,ブラシの位置を電気的中性点の傾きに合わせて適切に移動させることで,電機子反作用を緩和できます。