《機械》〈電熱〉[H29:問13]誘導加熱の用途や特徴に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

誘導加熱に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 産業用では金属の溶解や金属部分の熱処理などに用いられ,民生用では調理加熱に用いられている。

(2) 金属製の被加熱物を交番磁界内に置くことで発生するジュール熱によって被加熱物自体が発熱する。

(3) 被加熱物の透磁率が高いものほど加熱されやすい。

(4) 被加熱物に印加する交番磁界の周波数が高いほど,被加熱物の内部が加熱されやすい。

(5) 被加熱物として,銅,アルミよりも,鉄,ステンレスの方が加熱されやすい。

【ワンポイント解説】

電熱からの出題は毎年1題程度出題されます。その中で,誘導加熱の問題は数年に1回程度出題されます。

1.誘導加熱
交番磁界中に導電体を置くことによって,ファラデーの電磁誘導の法則により渦電流が生じ,その抵抗損(ジュール損)によって発熱します。オール電化のコンロ等はこの原理を利用しています。
交番磁束は表皮効果によって被加熱物の表面近くに集まり,渦電流も被加熱物の表面付近に集中します。その指標として誘導加熱による物体への電流浸透の深さ\( \ \delta \ \mathrm {[cm]} \ \)があり,比透磁率\( \ \mu _{\mathrm {s}} \ \),抵抗率\( \ \rho \ \mathrm {[\mu \Omega \cdot cm]} \ \),周波数\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
\delta &=&5.03\sqrt {\frac {\rho }{\mu _{\mathrm {s}} f}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,周波数が低いほど物体への電流浸透の深さは深くなります。

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
問題文の通り,誘導加熱は産業用では金属の溶解や金属部分の熱処理などに用いられ,民生用では調理加熱に用いられています。

(2)正しい
問題文の通り,金属製の被加熱物を交番磁界内に置くことで発生するジュール熱によって被加熱物自体が発熱します。

(3)正しい
問題文の通り,被加熱物の透磁率が高いものほど加熱されやすいという特徴があります。

(4)誤り
ワンポイント解説「1.誘導加熱」の通り,浸透深さ\( \ \delta \ \)は,\( \ \displaystyle \delta ∝\sqrt {\frac {1}{f}} \ \)の関係があり,周波数が高いほど内部が加熱されにくくなります。

(5)正しい
問題文の通り,被加熱物として,銅,アルミよりも,鉄,ステンレスの方が加熱されやすい特徴があります。