《理論》〈電子理論〉[H23:問13]トランジスタを用いた非安定マルチバイブレータに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

図のように,トランジスタを用いた非安定(無安定)マルチバイブレータ回路の一部分がある。ここで,\( \ \mathrm {S} \ \)はトランジスタの代わりの動作をするスイッチ,\( \ \mathrm {R}_{1} \ \),\( \ \mathrm {R}_{2} \ \),\( \ \mathrm {R}_{3} \ \)は抵抗,\( \ \mathrm {C} \ \)はコンデンサ,\( \ V_{\mathrm {CC}} \ \)は直流電源電圧,\( \ V_{\mathrm {b}} \ \)はベースの電圧,\( \ V_{\mathrm {c}} \ \)はコレクタの電圧である。

この回路において,初期条件としてコンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)の初期電荷は零,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)は開いている状態と仮定する。

a.スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)が開いている状態(オフ)のときは,トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)のベースには抵抗\( \ \mathrm {R}_{2} \ \)を介して\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)の電圧が加わるので,トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)は\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)となっている。ベースの電圧\( \ V_{\mathrm {b}} \ \)は電源電圧\( \ V_{\mathrm {CC}} \ \)より低いので,電流\( \ i \ \)は図の矢印“右”の向きに流れてコンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)は充電されている。

b.次に,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じる(オン)と,その瞬間はコンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)に充電されていた電荷でベースの電圧は負となるので,コレクタの電圧\( \ V_{\mathrm {c}} \ \)は瞬時に高くなる。電流\( \ i \ \)は矢印“\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)”の向きに流れ,コンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)は\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)を始め,やがてベースの電圧は\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)に変化し,コレクタの電圧\( \ V_{\mathrm {c}} \ \)は下がる。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) &  正  &  オ ン  &  左  &  放 電  &  負から正  \\
\hline
(2) &  負  &  オ フ  &  右  &  充 電  &  正から負  \\
\hline
(3) &  正  &  オ ン  &  左  &  充 電  &  正から零  \\
\hline
(4) &  零  &  オ フ  &  左  &  充 電  &  負から正  \\
\hline
(5) &  零  &  オ フ  &  右  &  放 電  &  零から正  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

電子回路の自己バイアス回路とコンデンサを組み合わせたマルチバイブレータに関する出題です。
回路内の電流の流れを理解できることが本問のカギとなります。機械科目のパワーエレクトロニクスにも繋がるような考え方なので,理解しておくようにしましょう。

1.バイポーラトランジスタ
\( \ \mathrm {n} \ \)型半導体と\( \ \mathrm {p} \ \)型半導体を\( \ \mathrm {npn} \ \)接合もしくは\( \ \mathrm {pnp} \ \)接合したデバイスで\( \ \mathrm {B} \ \)(ベース),\( \ \mathrm {E} \ \)(エミッタ),\( \ \mathrm {C} \ \)(コレクタ)端子があります。\( \ \mathrm {B} \ \)端子に電流が流れているとオンとなり,\( \ \mathrm {C→E} \ \)に電流が流れます。\( \ \mathrm {B} \ \)端子の電流をなくすとオフとなり,\( \ \mathrm {C→E} \ \)に電流が流れません。

【解答】

解答:(1)
(ア)
スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)が開いている状態(オフ)のときの回路図の様子を図2に示す。
図2の通りトランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)には抵抗\( \ \mathrm {R}_{2} \ \)を介しての電圧が加わる。

(イ)
(ア)の通り,トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)には正の電圧が加わるので,トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)はオンとなる。
トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)がオンのとき,ベースの電圧\( \ V_{\mathrm {b}} \ \)は電源電圧\( \ V_{\mathrm {CC}} \ \)より低い(\( \ ≒0.7 \ \mathrm {[V]} \ \))ので,図2の通り電流が流れコンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)は充電することになる。

(ウ)
スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じた直後の回路図の様子を図3に示す。
コンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)は\( \ \mathrm {S} \ \)により接地され\( \ \mathrm {R}_{1} \ \)側の端子が\( \ 0 \ \mathrm {[V]} \ \)となり,\( \ \mathrm {R}_{2} \ \)側の端子には\( \ \mathrm {R}_{2} \ \)を介して\( \ V_{\mathrm {CC}} \ \)が加わるため,コンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)は放電される。したがって,トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)のベース端子には電流が流れなくなり,トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)はオフとなる。これにより,コレクタ電圧\( \ V_{\mathrm {c}} \ \)は\( \ V_{\mathrm {CC}} \ \)まで上昇する。
このとき,電流\( \ i \ \)は図3の通り向きとなる。

(エ)
(ウ)の通り,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じると,コンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)は放電する。

(オ)
スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じてから,十分時間が経過した時の回路図の様子を図4に示す。
コンデンサ\( \ \mathrm {C} \ \)は放電を完了後,ベースの電圧が負から正に変わり充電を開始し,トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)のベース端子にも正の電圧が加わるので,トランジスタ\( \ \mathrm {Tr} \ \)はオンとなる。これによりコレクタの電圧\( \ V_{\mathrm {c}} \ \)は一気に下がる。
その後,再びスイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)をオンすれば図2のようになる。