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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
\( \ R_{1}=20 \ \Omega \ \),\( \ R_{2}=30 \ \Omega \ \)の抵抗,インダクタンス\( \ L_{1}=20 \ \mathrm {mH} \ \),\( \ L_{2}=40 \ \mathrm {mH} \ \)のコイル及び静電容量\( \ C_{1}=400 \ \mathrm {\mu F} \ \),\( \ C_{2}=600 \ \mathrm {\mu F} \ \)のコンデンサからなる図のような直並列回路がある。直流電圧\( \ E=100 \ \mathrm {V} \ \)を加えたとき,定常状態において,\( \ L_{1} \ \),\( \ L_{2} \ \),\( \ C_{1} \ \)及び\( \ C_{2} \ \)に蓄えられるエネルギーの総和の値\( \ \left[ \mathrm {J}\right] \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) \(0.12\) (2) \(1.20\) (3) \(1.32\) (4) \(1.40\) (5) \(1.52\)
【ワンポイント解説】
定常状態における各インピーダンスの特性を確認する問題です。定常状態とは,接続して十分時間が経ち回路として安定した状態のことです。直流回路では,コンデンサには電流は流れないので,交流回路と勘違いしないようにしましょう。
1.過渡現象におけるリアクトルの過渡状態と定常状態
① 過渡状態
リアクトルに流れる電流値を維持しようとする働きをします。したがって,リアクトルに電圧を印加した瞬間はほとんど電流は流れないので,開放として考えます。
② 定常状態
電圧を印加して十分時間が経過した後は,リアクトルの抵抗はほぼ零になります。したがって,短絡として考えます。
2.過渡現象におけるコンデンサの過渡状態と定常状態
① 過渡状態
コンデンサに蓄えられている電荷が零であるので,電流がものすごく流れやすい状態,すなわち短絡として考えます。
② 定常状態
コンデンサに十分に電荷が蓄えられているので,電流をこれ以上蓄えようとしない,すなわち開放として考えます。
3.自己インダクタンス\( \ L \ \)と蓄積される電磁エネルギー\( \ W \ \)の関係式
自己インダクタンス\( \ L \ \mathrm {[H]} \ \)のコイルに電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)を流し,十分時間が経過した時にコイルに蓄えられるエネルギー\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
W&=&\frac {1}{2}LI^{2} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
4.コンデンサの静電エネルギー\( \ W \ \)
コンデンサの静電容量\( \ C \ \mathrm {[F]} \ \)に電圧\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)が加わっているとすると,十分時間が経過した時にコンデンサに蓄えられる静電エネルギー\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
W &=&\frac {1}{2}CV^{2} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であり,\( \ Q=CV \ \)の関係から,
\[
\begin{eqnarray}
W&=&\frac {1}{2}QV \\[ 5pt ]
&=&\frac {Q^{2}}{2C} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
【解答】
解答:(5)
ワンポイント解説「1.過渡現象におけるリアクトルの過渡状態と定常状態」及び「2.過渡現象におけるコンデンサの過渡状態と定常状態」の通り,定常状態においてはコイルは短絡,コンデンサは開放と考えれば良いので,回路は図1のようになる。
したがって,\( \ L_{1} \ \)及び\( \ L_{2} \ \)に流れる電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I &=&\frac {E}{R_{1}+R_{2}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {100}{20+30} \\[ 5pt ]
&=&2 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,\( \ C_{1} \ \)及び\( \ C_{2} \ \)に加わる電圧\( \ V_{1} \ \mathrm {[V]} \ \)及び\( \ V_{2} \ \mathrm {[V]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{1} &=&R_{1}I \\[ 5pt ]
&=&20\times 2 \\[ 5pt ]
&=&40 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ]
V_{2} &=&R_{2}I \\[ 5pt ]
&=&30\times 2 \\[ 5pt ]
&=&60 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。以上から,\( \ L_{1} \ \),\( \ L_{2} \ \),\( \ C_{1} \ \)及び\( \ C_{2} \ \)に蓄えられるエネルギーの総和\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
W &=&\frac {1}{2}L_{1}I^{2}+\frac {1}{2}L_{2}I^{2}+\frac {1}{2}C_{1}V_{1}^{2}+\frac {1}{2}C_{2}V_{2}^{2} \\[ 5pt ]
&=&\frac {1}{2}\times 20\times 10^{-3}\times 2^{2}+\frac {1}{2}\times 40\times 10^{-3}\times 2^{2}+\frac {1}{2}\times 400\times 10^{-6}\times 40^{2}+\frac {1}{2}\times 600\times 10^{-6}\times 60^{2} \\[ 5pt ]
&=&0.04+0.08+0.32+1.08 \\[ 5pt ]
&=&1.52 \ \mathrm {[J]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。
