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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次のような実験を真空の中で行った。
まず,箔検電器の上部アルミニウム電極に電荷\( \ Q \ \mathrm {[C]} \ \)を与えたところ,箔が開いた状態になった。次に,箔検電器の上部電極に赤外光,可視光,紫外光の順に光を照射したところ,紫外光を照射したときに箔が閉じた。ただし,赤外光,可視光,紫外光の強度はいずれも上部電極の温度をほとんど上昇させない程度であった。
この実験から分かることとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 電荷\( \ Q \ \)は正電荷であった可能性も負電荷であった可能性もある。
(2) 紫外光が特定の強度よりも弱いとき箔はまったく閉じなくなる。
(3) 赤外光を照射したとき上部電極に熱電子が吸収された。
(4) 可視光を照射したとき上部電極の電気抵抗が大幅に低下した。
(5) 紫外光を照射したとき上部電極から光電子が放出された。
【ワンポイント解説】
アルミニウム電極からの電子放出に関する問題で,知識として知っていれば解けますが,電験としては少しマニアックな分野となるので,解けない受験生も多かったと思います。
1.外部光電効果
金属等に紫外光を照射すると,光のエネルギーが電子に与えられ,電子が放出する現象のことを言います。
量子力学的には,光のエネルギー\( \ E \ \)はプランク定数\( \ h \ \),光の振動数\( \ \nu \ \)を用いて,
\[
\begin{eqnarray}
E&=&h\nu \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と表され,光の振動数\( \ \nu \ \)と光の波長\( \ \lambda \ \)の間には,光の速度\( \ c \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
\nu &=&\frac {c}{\lambda } \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
の関係があるので,エネルギー\( \ E \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E&=&\frac {hc}{\lambda } \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,光の波長が短いほど大きくなります。
したがって,光電効果は波長の短い紫外光で発生しやすいことがわかります。
【解答】
解答:(5)
(1)誤り
外部光電効果は,電子特有の現象なので,電荷\( \ Q \ \)は正電荷であった可能性はありません。
(2)誤り
ワンポイント解説「1.外部光電効果」の通り,エネルギーは波長に反比例するため,強度が弱くても紫外光であれば電子放出は発生し,箔は閉じるようになります。
(3)誤り
赤外光を照射した際において,上部電極の温度をほとんど上昇させない程度であったとなっているので,熱電子は吸収されていません。
(4)誤り
可視光を照射したときに,特に装置は変化していないので,上部電極の電気抵抗も変化していません。金属の電気抵抗が大幅に低下する現象としては,金属を極低温に冷やした時に発生する超伝導現象によるものがあります。
(5)正しい
ワンポイント解説「1.外部光電効果」の通り,本実験は紫外光を照射したときに,上部電極から光電子が放出された現象です。