《電力》〈送電〉[R3:問11]地中送電線路に使用される電力ケーブルの許容電流に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

地中送電線路に使用される電力ケーブルの許容電流に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 電力ケーブルの絶縁体やシースの熱抵抗,電力ケーブル周囲の熱抵抗といった各部の熱抵抗を小さくすることにより,ケーブル導体の発熱に対する導体温度上昇量を低減することができるため,許容電流を大きくすることができる。

(2) 表皮効果が大きいケーブル導体を採用することにより,導体表面側での電流を流れやすくして導体全体での電気抵抗を低減することができるため,許容電流を大きくすることができる。

(3) 誘電率,誘電正接の小さい絶縁体を採用することにより,絶縁体での発熱の影響を抑制することができるため,許容電流を大きくすることができる。

(4) 電気抵抗率の高い金属シース材を採用することにより,金属シースに流れる電流による発熱の影響を低減することができるため,許容電流を大きくすることができる。

(5) 電力ケーブルの布設条数(回線数)を少なくすることにより,電力ケーブル相互間の発熱の影響を低減することができるため,\( \ 1 \ \)条当たりの許容電流を大きくすることができる。

【ワンポイント解説】

電力ケーブルに関する問題です。
ケーブルの許容電流は絶縁体部の許容温度により決まり,現在主流の\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルでは\( \ 90 \ \)℃程度となっています。
表皮効果の現象を知っていれば解ける問題なので,確実に得点できるようにしましょう。

1.ケーブルに発生する損失
①抵抗損
導体の抵抗により発生する損失で,導体電流の\( \ 2 \ \)乗に比例します。

②誘電体損
ケーブルの絶縁体部に流れる電流のうち,抵抗成分に流れる電流による損失です。ケーブルは図1の断面図を見ると分かると思いますが,コンデンサを巻いたような形状となっています。この誘電体部が劣化してくると抵抗分が大きくなる傾向があり,損失が増加します。

③シース損
ケーブルの絶縁体部の外側に巻く金属(シース)を流れる循環電流と渦電流による損失です。ケーブル導体を流れる電流から発生する磁束により電圧が誘起され発生します。

2.表皮効果
交流電流において,導体内を流れる電流により磁界が発生し,その発生した磁界により渦電流が発生することで,導体内の電流分布が外側に集中する現象で,電線の断面積が大きい電線では無視できなくなり,角周波数と透磁率,導電率が大きくなるほど顕著となります。

【解答】

解答:(2)
(1)正しい
問題文の通り,各部の熱抵抗を小さくすると,ケーブル導体の上昇温度を抑えることができるので,許容電流を大きくすることができます。

(2)誤り
ワンポイント解説「2.表皮効果」の通り,表皮効果が大きいケーブル導体を採用すると,導体表面に電流が集中することにより導体全体での電気抵抗が大きくなるため,許容電流は小さくなります。

(3)正しい
問題文の通り,誘電率,誘電正接の小さい絶縁体を採用することにより,絶縁体での発熱の影響を抑制することができるため,誘電損が小さくなり,許容電流は大きくなります。

(4)正しい
問題文の通り,電気抵抗率の高い金属シース材を採用すると,シースを流れる電流が減少しシース損が小さくなるため,許容電流は大きくなります。

(5)正しい
問題文の通り,電力ケーブルの布設条数(回線数)を少なくすることにより,電力ケーブル相互間の発熱の影響を低減することができるため,\( \ 1 \ \)条当たりの許容電流を大きくなります。