《法規》〈電気施設管理〉[H18:問5]周波数調整を受け持つ水力発電所の運用に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,電力系統における周波数調整を受け持つ水力発電所の運用に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句を記述用紙の解答欄に記入しなさい。

電力系統の負荷は,時々刻々と変動する。この変動は,時間的に数分程度以下の微小変動,数分から\( \ 10 \ \)分程度までの短周期変動,\( \ 10 \ \)分程度以上の長周期変動に分けられる。この微小変動に対して,水力発電所では,周波数が上がると発電機出力を減らし,逆に下がると発電機出力を増加させる制御を\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の動作により行い,周波数変動を抑制している。

また,調整池式水力発電所及び\( \ \fbox {  (2)  } \ \)式水力発電所は,火力発電所とともに短周期周波数変動に応じて出力調整を行う\( \ \fbox {  (3)  } \ \)発電所として機能している。

これらの水力発電所に求められる主な機能としては,
① 調整のための十分な出力変化幅及び運転継続能力を持つこと
② 負荷変動に対する\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が高く,出力の変動範囲で高効率運転ができること
③ 出力変動により,水利上及び送電上の支障が少ないこと
である。

なお,ピーク供給力としての役割を持つ揚水式水力の技術として,需要の少ない夜間帯の運転において水車の回転数を変化させ,系統全体の周波数維持・改善に寄与する\( \ \fbox {  (5)  } \ \)揚水発電がある。

【ワンポイント解説】

水力発電所の種類と運用方法に関する問題です。
電力系統の周波数は,発電電力量(供給)と消費電力量(需要)のバランスによって決定されます。この有効電力のバランスが崩れると周波数が変動するため,様々な時間領域の変動に対して需給調整を行っています。

1.電力系統における周波数調整方法
①微小変動(数秒~数十秒の変動)
負荷の自己制御性を利用して調整します。一般的な回転機負荷は周波数が上がると消費電力が増え,周波数が下がると消費電力が減少します。この特性を利用し周波数を制御します。

②短周期変動(数秒~数分程度の変動)
発電系統のガバナフリー運転で調整します。発電機の調速機によって周波数変化量から出力変化量を約\( \ 1.0 \ \mathrm {[%MW/0.1Hz]} \ \)程度で調整します。例えば火力発電所であったら,タービン入口のガバナ開度を周波数が低い場合は増加し,周波数が高い場合は減少させて蒸気流入量を調整します。

③長周期変動(数分~数十分の変動)
系統の周波数と基準周波数の偏差を検出して中央給電指令所からの制御信号に伴い,負荷周波数制御\( \ \left( \mathrm {LFC}\right) \ \)で調整します。火力発電所であれば,中央給電指令所からの信号に合わせ出力をコントロールさせます。

④日負荷変動(数十分~数時間の変動)
天候,気温,湿度等のデータを元に需要予測を決定し,出力配分を各発電所の信号へ送ります。経済負荷配分制御\( \ \left( \mathrm {ELD}\right) \ \)により最も経済的な配分を行い,各発電機の出力調整,起動停止等を行います。

2.水力発電所の取水方式
①水路式
 下図のように,比較的自然勾配のある河川を取水ダムでせき止め,導水路と水圧管を経て落差を得て,水車へ水を送る方式です。


出典:尾上建夫;みんなが欲しかった!電験三種 電力の実践問題集 P.2,TAC出版

②ダム式
 下図のように,ダムにより河川をせき止めることで生じる落差を利用して水車へ水を送る方式です。サージタンクが不要という特徴があります。
 ダムの建設に両岸の頑丈な地盤が必須であり,水路式に比べると一般に建設コストが高くなります。


出典:尾上建夫;みんなが欲しかった!電験三種 電力の実践問題集 P.3,TAC出版

③ダム水路式
 水路式とダム式を組み合わせたような方式で,ダムで貯水した水を導水路で落差が得られる地点まで導き,その後水車へ水を送る方式です。

3.水力発電所の河川の利用方法
①流込み式
 水路式発電所で使用され,河川の自然の流れをそのまま利用し,流量見合いて発電する方式です。したがって,流量を調整する機能がないので,季節や雨量等により発電量が変わります。水路式が該当します。

②調整池式
 \( \ 1 \ \)~数日程度の貯水をできる調整池を持ち,電力需要が小さいときは流量を抑え,電力需要のピーク時に流量を増やし,発電量を増加させる方式です。ダム式やダム水路式が該当します。

③貯水池式
 調整池よりも容量の大きい貯水池で,季節や雨量の変化に対応し,長期間の需要変動に応じて発電量を調整する方式です。大型のダム式やダム水路式で採用されることが多いです。

④揚水式
 上部調整池と下部調整池を持ち,発電電動機で夜間休祭日等の軽負荷時に水を上池に揚水して,昼間の重負荷時に発電する方式です。負荷を平準化することができるので,発電設備全体の利用率が上がり,さらに揚水時にも負荷調整ができる等の特長があります。

4.可変速揚水発電システム
可変速揚水発電システムは下図のようなシステムで,二次励磁装置により固定子と回転子の差の周波数(回転数)をコントロールし,系統の周波数を調整します。
これはこれまで石油火力や天然ガス火力で調整していた系統周波数の調整を揚水発電所で行おうとするもので,発電運転している時のみでなく揚水運転している夜間も行うことができます。
これにより,火力発電所の燃料費を抑え,全体として経済的な運用を行うことができます。

【解答】

(1)解答:調速機(ガバナ)
ワンポイント解説「1.電力系統における周波数調整方法」の通り,微小変動に対しては,周波数の変化を検知し,水車のガイドベーン開度などを自動的に調整して出力を加減する調速機(ガバナ)の動作により行います。

(2)解答:貯水池
ワンポイント解説「1.電力系統における周波数調整方法」及び「3.水力発電所の河川の利用方法」の通り,短周期周波数変動に応じて出力調整を行うことが可能なのは調整池式水力発電所と貯水池式水力発電所となります。

(3)解答:周波数制御
ワンポイント解説「1.電力系統における周波数調整方法」の通り,短周期周波数変動に応じて出力調整を行う機能は周波数制御といいます。

(4)解答:速応度(速応性)
水力発電所に求められる特性としては,負荷変動に対する速応度(速応性)の高さがあります。一般的に使われる追従性や応答性でも誤りではないかと思います。

(5)解答:可変速
ワンポイント解説「4.可変速揚水発電システム」の通り,需要の少ない夜間帯の運転において水車の回転数を変化させ,系統全体の周波数維持・改善に寄与する発電を可変速揚水発電といいます。



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