《理論》〈電磁気〉[H28:問1] 自己インダクタンスに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,同軸線路の自己インダクタンスに関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

図のように,中心軸を同じくする半径\(a\)の無限に長い円筒状導体(内部導体)と半径\(b\)の無限に長い円筒状導体(外部導体)がある。なお,\(a < b\)であり,それぞれの円筒状導体の厚みは無限に小さいとしてよい。このような回路の単位長さ当たりの自己インダクタンスを,鎖交する磁束を用いる方法と,蓄積される磁気エネルギーを用いる方法の二通りの方法で求める。
同軸線路には,図に示す方向に同じ大きさの電流\(I\)が流れている。この電流が作り出す磁束密度の大きさ\(B\)は,内側導体の内部及び外側導体の外部では零,内側導体及び外側導体に挟まれた領域では\(B=\fbox {  (1)  }\)となるため,単位長さ当たりの鎖交磁束\(\Phi \)は,
\[
\Phi =\int ^{b}_{a}Bdr=\fbox {  (2)  }
\] となり,\(\Phi \)と単位長さ当たりの自己インダクタンス\(L \)との関係式\(\Phi =\fbox {  (3)  }\)を用いて,\(L \)が求まる。
一方,単位長さ当たりに蓄積される磁気エネルギー\(W\)は,
\[
W =2\pi \int ^{b}_{a} \frac {B^{2}}{2\mu _{0}} rdr=\fbox {  (4)  }
\] となり,蓄積エネルギーと自己インダクタンスの関係式\(W=\fbox {  (5)  }\)を用いると同様に単位長さ当たりの自己インダクタンスが求まり,両者が一致することが分かる。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \frac {I}{L}   &(ロ)& \frac {\mu _{0}I}{4\pi }\left( \frac {1}{a} – \frac {1}{b}\right)   &(ハ)& L\frac {dI}{dt} \\[ 5pt ] &(ニ)& \frac {\mu _{0}I^{2}}{8\pi }\left( \frac {1}{a} – \frac {1}{b}\right)   &(ホ)& \frac {\mu _{0}I^{2}}{4\pi }\ln {\frac {b}{a}}   &(ヘ)& \frac {\mu _{0}I}{2\pi r} \\[ 5pt ] &(ト)& \frac {\mu _{0}I}{4\pi r^{3}}   &(チ)& \frac {\mu _{0}I}{8\pi }\left( \frac {1}{a^{2}} – \frac {1}{b^{2}}\right)    &(リ)& \frac {L^{2}I}{2} \\[ 5pt ] &(ヌ)& \frac {\mu _{0}I}{2\pi }\ln {\frac {b}{a}}    &(ル)& \frac {LI^{2}}{2}   &(ヲ)& \frac {\mu _{0}I^{2}}{16\pi }\left( \frac {1}{a^{2}} – \frac {1}{b^{2}}\right)   \\[ 5pt ] &(ワ)& \frac {\mu _{0}I}{4\pi r^{2}}   &(カ)& \frac {I^{2}}{L}   &(ヨ)& LI
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

アンペールの周回積分の法則,インダクタンスの電磁気学と自然対数の積分の数学を使用します。電磁気は覚える公式が多いため大変ですが,問題に触れ少しずつ覚えていきましょう。本問では以下の公式を使用します。

1.アンペールの周回積分の法則
\[
I=\int_{c} H dl
\] 本問においては,
\[
I=2\pi r H ⇔ H=\frac {I}{2\pi r}
\] 2.磁束密度\(B\)と磁界の強さ\(H\)の関係式
\[
B=\mu H
\] 3.自己インダクタンス\(L\)と鎖交磁束数\(\Phi \)の関係式
\[
LI=N\Phi (本問では巻数N=1)
\] 4.自己インダクタンス\(L\)と蓄積される電磁エネルギー\(W\)の関係式
\[
W=\frac {LI^{2}}{2}
\] 5.自然対数の微分・積分
\[
\int ^{b}_{a}\frac {1}{x}dx=\ln {b} -\ln {a}=\ln {\frac {b}{a}}
\]

【解答】

(1)解答:ヘ
内側導体及び外側導体に挟まれた領域すなわち\(a < r < b\)では,貫く電流が内側導体を流れる電流\(I\)のみである。したがって,磁界の強さ\(H_{r}\)はアンペールの周回積分の法則から,
\[
H_{r}=\frac {I}{2\pi r}
\] であり,磁束密度の大きさ\(B=\mu _{0}H_{r}\)の関係があるから,
\[
\begin{eqnarray}
B &=& \mu _{0}H_{r} \\[ 5pt ] &=& \frac {\mu _{0}I}{2\pi r}
\end{eqnarray}
\] となる。

(2)解答:ヌ
題意より,鎖交磁束\(\Phi\)は(1)の解答を用いて,
\[
\begin{eqnarray}
\Phi &=& \int ^{b}_{a}Bdr \\[ 5pt ] &=& \int ^{b}_{a}\frac {\mu _{0}I}{2\pi r}dr \\[ 5pt ] &=& \frac {\mu _{0}I}{2\pi }\int ^{b}_{a}\frac {1}{r}dr \\[ 5pt ] &=& \frac {\mu _{0}I}{2\pi }\left[ \ln {r}\right] ^{b}_{a} \\[ 5pt ] &=& \frac {\mu _{0}I}{2\pi }\left( \ln {b}-\ln {a}\right) \\[ 5pt ] &=& \frac {\mu _{0}I}{2\pi }\ln \frac {b}{a}
\end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)解答:ヨ
ワンポイント解説の「3.自己インダクタンス\(L\)と鎖交磁束数\(\Phi \)の関係式」で述べた通り、解答は\(\displaystyle LI\)となります。

(4)解答:ホ
題意より,単位長さ当たりに蓄積される磁気エネルギー\(W\)は,
\[
\begin{eqnarray}
W &=& 2\pi \int ^{b}_{a} \frac {B^{2}}{2\mu _{0}} rdr \\[ 5pt ] &=& 2\pi \int ^{b}_{a} \frac {\left[ \frac {\mu _{0}I}{2\pi r}\right] ^{2}}{2\mu _{0}} rdr \\[ 5pt ] &=& \frac {\mu _{0}I^{2}}{4\pi }\int ^{b}_{a} \frac {1}{r}dr \\[ 5pt ] &=& \frac {\mu _{0}I^{2}}{4\pi }\ln \frac {b}{a}
\end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ル
ワンポイント解説の「4.自己インダクタンス\(L\)と蓄積される電磁エネルギー\(W\)の関係式」で述べた通り、解答は\(\displaystyle \frac {LI^{2}}{2}\)となります。



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