《電力》〈送電〉[H26:問16]送電線の1線地絡事故に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

図に示すように,中性点をリアクトル\(\mathrm {L}\)を介して接地している公称電圧\(66 \ \mathrm {kV}\)の系統があるとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。なお,図中の\(\mathrm {C}\)は,送電線の対地静電容量に相当する等価キャパシタを示す。また,図に表示されていない電気定数は無視する。

(a) 送電線の線路定数を測定するために,図中の\(\mathrm {A}\)点で変電所と送電線を切り離し,\(\mathrm {A}\)点での送電線の3線を一括して,これと大地間に公称電圧の相電圧相当の電圧を加えて充電すると,一括した線に流れる全充電電流は\(115 \ \mathrm {A}\)であった。このとき,この送電線の1相当たりのアドミタンスの大きさ\(\mathrm {[mS]}\)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) 0.58  (2) 1.0  (3) 1.7  (4) 3.0  (5) 9.1

(b) 図中の\(\mathrm {B}\)点の\(\mathrm {a}\)相で1線地絡事故が発生したとき,地絡点を流れる電流を零とするために必要なリアクトル\(\mathrm {L}\)のインピーダンスの大きさ\(\mathrm {[\Omega ]}\)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし,送電線の電気定数は,(a)で求めた値を用いるものとする。

 (1) 111  (2) 196  (3) 333  (4) 575  (5) 1000

【ワンポイント解説】

(b)の地絡点に流れる電流を零というのは,共振の条件と同義となります。(a)を間違えると(b)も間違えてしまうため,計算間違いをしないようにしましょう。

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【解答】

(a)解答:(2)
公称電圧の相電圧相当の電圧を加えた時の等価回路は図1のようになる。
この回路に流れる電流\(I=115 \ \mathrm {A}\)であり,合成アドミタンスの大きさが\(3Y\)であるから,
\[
\begin{eqnarray}
I&=&3Y\frac {V}{\sqrt {3}} \\[ 5pt ] Y&=&\frac {I}{\sqrt {3}V} \\[ 5pt ] &=&\frac {115}{\sqrt {3}\times 66\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &≒&0.0010 \ \mathrm {[S]} → 1.0 \ \mathrm {[mS]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(3)
1線地絡事故時に地絡点に流れる電流を零とするためには,リアクトルとコンデンサの合成インピーダンスが零となるように調整すれば,地絡点には電流が流れなくなる。
よって,リアクトルのインピーダンスを\(X_{\mathrm {L}}\)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
X_{\mathrm {L}}&=&\frac {1}{3Y} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{3\times 0.0010} \\[ 5pt ] &≒&333 \ \mathrm {[\Omega ]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]