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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
食塩水を電気分解して,水酸化ナトリウム(\( \ \mathrm {NaOH} \ \),か性ソーダ)と塩素(\( \ \mathrm {Cl_{2}} \ \))を得るプロセスは食塩電解と呼ばれる。食塩電解の工業プロセスとして,現在,わが国で採用されているものは,\( \ \fbox { (ア) } \ \)である。
この食塩電解法では,陽極側と陰極側を仕切る膜に\( \ \fbox { (イ) } \ \)イオンだけを選択的に透過する密隔膜が用いられている。外部電源から電流を流すと,陽極側にある食塩水と陰極側にある水との間で電気分解が生じてイオンの移動が起こる。陽極側で生じた\( \ \fbox { (ウ) } \ \)イオンが密隔膜を通して陰極側に入り,\( \ \fbox { (エ) } \ \)となる。
上記の記述中の空白箇所 (ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) & 隔膜法 & 陽 & 塩 素 & \mathrm {Cl_{2}} \ \\
\hline
(2) & イオン交換膜法 & 陽 & ナトリウム & \mathrm {NaOH} \\
\hline
(3) & イオン交換膜法 & 陰 & 塩 素 & \mathrm {Cl_{2}} \ \\
\hline
(4) & イオン交換膜法 & 陰 & ナトリウム & \mathrm {NaOH} \\
\hline
(5) & 隔膜法 & 陰 & 水 酸 & \mathrm {NaOH} \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
日本で採用されている食塩電解の工業プロセスに関する問題です。
なかなかプロセスが頭に入っている受験生は少ないかと思います。ただし,(ウ)の選択肢において一般に塩素イオンや水酸イオンではなく,塩化物イオン及び水酸化物イオンと呼ばれることを知っていれば選択肢が一気に絞れ,さらにナトリウムイオンが陽イオンであることを知っていれば正答は十分に導き出せるかと思います。
1.イオン交換膜法による食塩電解
食塩電解は食塩水を電解して塩素,水酸化ナトリウム(苛性ソーダ),水素を得る工業電解プロセスで,イオン交換膜法が日本で採用されており,図1のようなフローとなります。イオン交換膜はナトリウムイオン\( \ \mathrm {Na}^{+} \ \)のみが通過する構造となっています。また陽極と陰極の反応式は以下の通りとなります。
\[
\begin{eqnarray}
陽極&:&2\mathrm {Cl}^{-} \ → \ \mathrm {Cl_{2}} \ + \ 2\mathrm {e}^{-} \\[ 5pt ]
陰極&:&2\mathrm {Na}^{+} \ + \ 2\mathrm {H}^{+} \ + \ 2\mathrm {OH}^{-} \ + \ 2\mathrm {e}^{-} \ → \ \mathrm {H_{2}} \ + \ 2\mathrm {NaOH} \\[ 5pt ]
全体&:&2\mathrm {NaCl} \ + \ 2\mathrm {H_{2}O} \ → \ \mathrm {Cl_{2}} \ + \ \mathrm {H_{2}} \ + \ 2\mathrm {NaOH} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【解答】
解答:(2)
(ア)
ワンポイント解説「1.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,現在日本で採用されている食塩電解の方法はイオン交換膜法です。
(イ)
ワンポイント解説「1.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,陽極側と陰極側を仕切る膜は陽イオンだけを選択的に透過します。
(ウ)
ワンポイント解説「1.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,陽極側で発生し密隔膜を通過するのはナトリウムイオンとなります。
(エ)
ワンポイント解説「1.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,ナトリウムイオンは陰極側で水酸化物イオンと反応し,\( \ \mathrm {NaOH} \ \)となります。