《機械》〈変圧器〉[R01:問7]電気機器の損失に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電気機器の損失に関する記述である。

a コイルの電流とコイルの抵抗によるジュール熱が\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)であり,この損失を低減するため,コイルを構成する電線の断面積を大きくする。
交流電流が並列コイルに分かれて流れると,並列コイル間の電流不平衡からこの損失が増加する。この損失を低減するため,並列回路を構成する各コイルの鎖交磁束と抵抗値,すなわち,各コイルのインピーダンスを等しくする。

b 鉄心に交流磁束が通ると損失が発生する。その成分は\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)と\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)の二つに分類される。前者は,交流磁束によって誘導された電流が鉄心を流れてジュール熱として発生する。そこで,電気抵抗が高い強磁性材料や,表面を絶縁膜で覆った薄い鉄板を積層した積層鉄心を磁気回路に用いて,電流の経路を断つことで損失を低減する。後者は,鉄心の磁束が磁界の履歴に依存するために発生する。この\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)を低減するために電磁鋼板が磁気回路に広く用いられている。

c 上記の電磁気要因の損失のほか,電動機や発電機では,回転子の運動による軸受け摩擦損や冷却ファンの空気抵抗による損失などの\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)がある。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) & 銅 損 & 渦電流損 & ヒステリシス損 & 機械損 \\
\hline
(2) & 鉄 損 & 抵抗損 & ヒステリシス損 & 銅損 \\
\hline
(3) & 銅 損 & 渦電流損 & インダクタンス損 & 機械損 \\
\hline
(4) & 鉄 損 & 機械損 & ヒステリシス損 & 銅損 \\
\hline
(5) & 銅 損 & 抵抗損 & インダクタンス損 & 機械損 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

電気機器の損失に関する問題ですが,ほぼ変圧器の損失を理解しているかどうかを問う問題となっています。変圧器の損失は鉄損と銅損がありますが,それぞれどのようなものがあるか理解しておくようにしましょう。

1.変圧器の無負荷損
変圧器の無負荷損は鉄損と呼ばれ,変圧器の鉄心で発生する損失です。負荷の大きさに比例しない一定に生じる損失です。

①渦電流損
鉄心で磁束の時間的変化により,鉄心に起電力が発生することで渦電流が生じ,これを渦電流損と呼びます。

②ヒステリシス損
コイルに交流を流した状態で鉄心が磁化を周期的に繰り返すことにより発生する損失です。ヒステリシスループの大きさがヒステリシス損の大きさとなります。

2.変圧器の負荷損
変圧器の負荷電流によって生じる損失で,銅損と漂遊負荷損があります。

①銅損
一次巻線と二次巻線の抵抗分によって生じる抵抗損です。巻線が銅で構成されているので銅損と呼ばれます。

②漂遊負荷損
コイルの漏れ磁束によって発生する損失です。通常は無視できない損失ですが,電験の場合は銅損よりはるかに小さいため無視する場合が多いです。

【関連する「電気の神髄」記事】

  変圧器の無負荷損
  変圧器の負荷損

【解答】

解答:(1)
(ア)
ワンポイント解説「2.変圧器の負荷損」の通り,コイルの電流とコイルの抵抗によるジュール熱すなわち抵抗損は銅損となります。

(イ)
鉄心で発生する損失のうち,「交流磁束によって誘導された電流が鉄心を流れてジュール熱として発生する」となっているので,ワンポイント解説「1.変圧器の無負荷損」の通り,渦電流損となります。

(ウ)
鉄心で発生する損失のうち,「鉄心の磁束が磁界の履歴に依存するために発生する」損失なので,ワンポイント解説「1.変圧器の無負荷損」の通り,ヒステリシス損となります。

(エ)
電動機や発電機等の回転体で発生する回転子の運動による軸受け摩擦損や冷却ファンの空気抵抗による機械的損失を機械損と呼びます。