《機械》〈電気化学〉[H30:問12]リチウムイオン二次電池に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,リチウムイオン二次電池に関する記述である。

リチウムイオン二次電池は携帯用電子機器や電動工具などの電源として使われているほか,電気自動車の電源としても使われている。

リチウムイオン二次電池の正極には\(\fbox {  (ア)  }\)が用いられ,負極には\(\fbox {  (イ)  }\)が用いられている。また,電解液には\(\fbox {  (ウ)  }\)が用いられている。放電時には電解液中をリチウムイオンが\(\fbox {  (エ)  }\)へ移動する。リチウムイオン二次電池のセル当たりの電圧は\(\fbox {  (オ)  } \ \mathrm {V} \ \)程度である。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ)\\
\hline
(1) & \displaystyle {リチウムを含む}\atop \displaystyle {金属酸化物} & 主に黒鉛 & \displaystyle {有機}\atop \displaystyle {電解液} & \displaystyle {負極から}\atop \displaystyle {正極} & 3~4 \\
\hline
(2) & \displaystyle {リチウムを含む}\atop \displaystyle {金属酸化物} & 主に黒鉛 & \displaystyle {無機}\atop \displaystyle {電解液} & \displaystyle {負極から}\atop \displaystyle {正極} & 1~2 \\
\hline
(3) & \displaystyle {リチウムを含む}\atop \displaystyle {金属酸化物} & 主に黒鉛 & \displaystyle {有機}\atop \displaystyle {電解液} & \displaystyle {正極から}\atop \displaystyle {負極} & 1~2 \\
\hline
(4) & 主に黒鉛 & \displaystyle {リチウムを含む}\atop \displaystyle {金属酸化物} & \displaystyle {有機}\atop \displaystyle {電解液} & \displaystyle {負極から}\atop \displaystyle {正極} & 3~4 \\
\hline
(5) & 主に黒鉛 & \displaystyle {リチウムを含む}\atop \displaystyle {金属酸化物} & \displaystyle {無機}\atop \displaystyle {電解液} & \displaystyle {正極から}\atop \displaystyle {負極} & 1~2 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

リチウムイオン電池は携帯電話等の普及により非常によく利用され,現在はとても大きな市場となっていますので,今後も試験問題で取り上げられることは多いと思います。基本的な考え方は一般的な二次電池と変わりません。

1.リチウムイオン電池
リチウムイオンが移動することにより充放電を行うことから「リチウムイオン電池」と呼ばれます。エネルギー密度が非常に高く高い起電力を得ることができ,常温で使用可能なので,パソコンや携帯電話等日常的に扱うものにも多く採用されています。

①材料(反応式は暗記不要です)
 正 極:\( \ \mathrm {LiCoO_{2}} \ \)等
 負 極:黒鉛等
 電解質:有機電解質

②特徴
・エネルギー密度が高く(鉛蓄電池の約\( \ 5 \ \)倍),公称電圧も\( \ 3.6 \ \mathrm {V} \ \)と高い。
・浅い充電と放電を繰り返すことで電池の容量が減ってしまうメモリー効果という現象が発生しない。
・\( \ 500 \ \)回以上の充放電が可能で,高寿命である。
・高速充電が可能で,充放電効率も良い。
・液体を使用せず凍ることがないため,氷点下から\( \ 60 \ \)℃の高温まで使用可能である。
・充放電時における材料の不安定化により,発火・爆発等の危険性があるため,充放電時の監視保護が別に必要となる。

【解答】

解答:(1)
(ア)
(イ)
リチウムイオン二次電池は正極にリチウムを含む金属酸化物(\( \ \mathrm {LiCoO_{2}} \ \)),負極に黒鉛(グラファイト)を使用します。

(ウ)
リチウムは水と激しく反応する性質があるため,電解液には水溶液ではない有機電解液を使用します。

(エ)
充電時にはリチウムイオンが\( \ \mathrm {LiCoO_{2}} \ \)側から黒鉛側に移動し,放電時には黒鉛側から\( \ \mathrm {LiCoO_{2}} \ \)側に移動します。

(オ)
ワンポイント解説「1.リチウムイオン電池」の通り,リチウムイオン二次電池はセル当たりの電圧が\( \ 3~4 \ \mathrm {V} \ \)と高いのが特徴です。