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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,それぞれのダイオードについて述べたものである。
a.可変容量ダイオードは,通信機器の同調回路などに用いられる。このダイオードは,\( \ \mathrm {pn} \ \)接合に\( \ \fbox { (ア) } \ \)電圧を加えて使用するものである。
b.\( \ \mathrm {pn} \ \)接合に\( \ \fbox { (イ) } \ \)電圧を加え,その値を大きくしていくと,降伏現象が起きる。この降伏電圧付近では,流れる電流が変化しても接合両端の電圧はほぼ一定に保たれる。定電圧ダイオードは,この性質を利用して所定の定電圧を得るようにつくられたダイオードである。
c.レーザダイオードは光通信や光情報機器の光源として利用され,\( \ \mathrm {pn} \ \)接合に\( \ \fbox { (ウ) } \ \)電圧を加えて使用するものである。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(ウ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) \\
\hline
(1) & 逆方向 & 順方向 & 逆方向 \\
\hline
(2) & 順方向 & 逆方向 & 順方向 \\
\hline
(3) & 逆方向 & 逆方向 & 逆方向 \\
\hline
(4) & 順方向 & 順方向 & 逆方向 \\
\hline
(5) & 逆方向 & 逆方向 & 順方向 \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
ダイオードの特徴に関する問題です。
出題形式は違いますが,平成26年問12に類題が出題されていましたので,過去問対策をしっかりとされた方であれば解ける問題であったかと思います。
1.ダイオードの電圧・電流特性曲線
ダイオードは図1に示すように,順方向に電圧をかけた場合には比較的小さな電圧(約\( \ 0.6~0.7 \ \mathrm {V} \ \))で導通し,逆方向に電圧をかけた場合にはほとんど導通しません。
これをダイオードの整流作用といいます。
ただし,逆方向の電圧をさらに増加させツェナー電圧(降伏電圧)まで到達すると,急激に電流が流れるようになります。これを降伏現象といいます。
2.定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)
ダイオードにみられる逆方向の電圧電流特性の急激な降伏現象を利用し,一定電圧を出力するダイオードです。
3.可変容量ダイオード
\( \ \mathrm {p} \ \)形半導体と\( \ \mathrm {n} \ \)形半導体を\( \ \mathrm {pn} \ \)接合し,逆電圧をかけることで空乏層が広がる現象を利用したダイオードです。
電圧を大きくすると空乏層が大きくなり,空乏層を誘電体としたコンデンサのようになります。
コンデンサの静電容量\( \ C \ \mathrm {[F]} \ \)が誘電率\( \ \varepsilon \ \mathrm {[F/m]} \ \),極板面積\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \),極板間の距離\( \ d \ \mathrm {[m]} \ \)を用いて,
\[
\begin{eqnarray}
C&=&\frac {\varepsilon S}{d} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と表されることから,電圧を大きくすると極板間の距離が大きくなり,静電容量が小さくなることがわかります。
4.レーザダイオード
図3のように,\( \ \mathrm {pn} \ \)接合した半導体に順方向電圧をかけると,\( \ \mathrm {p} \ \)形半導体と\( \ \mathrm {n} \ \)形半導体の活性層にて電子と正孔が再結合する原理を利用し発光させます。発光ダイオード\( \ \mathrm {LED} \ \)と似ていますが,活性層で反射を繰り返すことにより指向性の高い光が得られます。
【解答】
解答:(5)
(ア)
ワンポイント解説「3.可変容量ダイオード」の通り,可変容量ダイオードは逆方向電圧を加えて使用します。
(イ)
ワンポイント解説「1.ダイオードの電圧・電流特性曲線」及び「2.定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)」の通り,降伏現象は逆方向電圧を加える際に発生し,定電圧ダイオードはこの性質を利用しています。
(ウ)
ワンポイント解説「4.レーザダイオード」の通り,レーザダイオードは順方向電圧を加えて使用します。