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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
石炭火力発電所が \ 1 \ 日を通して定格出力 \ 600 \ \mathrm {MW} \ で運転されるとき,燃料として使用される石炭消費量が \ 150 \ \mathrm {t / h} \ ,石炭発熱量が \ 34 \ 300 \ \mathrm {kJ / kg} \ で一定の場合,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,石炭の化学成分は重量比で炭素が \ 70 \ \mathrm {%} \ ,水素が \ 5 \ \mathrm {%} \ ,残りの灰分等は燃焼に影響しないものと仮定し,原子量は炭素 \ 12 \ ,酸素 \ 16 \ ,水素 \ 1 \ とする。燃焼反応は次のとおりである。
\begin{eqnarray}
\mathrm {C}+\mathrm {O}_{2}&→& \mathrm {CO}_{2} \\[ 5pt ]
2\mathrm {H}_{2}+\mathrm {O}_{2}&→& 2\mathrm {H}_{2}\mathrm {O} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
(a) 発電端効率の値 \ \mathrm {[%]} \ として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) \ 41.0 \ (2) \ 41.5 \ (3) \ 42.0 \ (4) \ 42.5 \ (5) \ 43.0 \
(b) \ 1 \ 日に発生する二酸化炭素の重量の値 \ \mathrm {[t]} \ として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) \ 3.8\times 10^{2} \ (2) \ 2.5\times 10^{3} \ (3) \ 3.8\times 10^{3} \
(4) \ 9.2\times 10^{3} \ (5) \ 1.3\times 10^{4} \
【ワンポイント解説】
石炭火力発電所の熱効率と二酸化炭素排出量を求める問題です。
どうしても計算量が多くなり,受験生の正答率も下がりやすくなってしまう問題ですが,計算パターンは決まっているため,しっかりと理解できると大きな得点源となる問題です。
直近では令和3年問15にも熱効率の計算問題が出題されていますので,チャレンジしてみて下さい。
1.汽力発電所の各効率
汽力発電所で用いられる効率は以下の通りです。計算簡略化の為,すべて小数表記での計算となっています。効率の低下は燃料の使用量(支出)に影響するため,電力会社では熱効率が非常に重要なファクターとなっています。
①ボイラ効率 \ \eta _{\mathrm {B}} \
ボイラで燃料を燃焼し,給水を蒸気にする際の熱交換率の指標です。排ガス損失等があります。
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {B}}&=&\frac {ボイラの蒸気として得た熱量}{燃料使用量から換算した熱量} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
②タービン室効率 \ \eta _{\mathrm {T}} \
タービンに入った蒸気がどの程度のタービン出力になるかの効率で,タービン室という名前はタービンと復水器を合わせた効率という意味です。一般的な汽力発電所では一番ロスが大きい場所となります。
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {T}}&=&\frac {タービン軸出力}{タービンへ入る蒸気の熱量} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
③発電機効率 \ \eta _{\mathrm {G}} \
発電機の風損や巻線抵抗損等を考慮した効率で,一般的な水素発電機では \ \mathrm {98~99%} \ 程度となっています。
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {G}}&=&\frac {発電機出力}{タービン軸出力} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
④発電端効率 \ \eta _{\mathrm {P}} \
発電ユニットの効率を表すもので,燃料の熱量がどの程度発電されたかを示す指標です。
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {P}}&=&\frac {発電機出力}{燃料使用量から換算した熱量}&=&\eta _{\mathrm {B}}\cdot \eta _{\mathrm {T}}\cdot \eta _{\mathrm {G}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
⑤送電端効率 \ \eta _{\mathrm {S}} \
発電端効率から所内率 \ L \ を考慮し算出した効率で,発電所としての総合効率の指標となります。
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {S}}&=&\eta _{\mathrm {P}}( 1-L ) \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
2. \ \mathrm {[kJ]} \ と \ \mathrm {[kW\cdot h]} \ の変換
単位の定義より,
\begin{eqnarray}
1 \ \mathrm {[kJ/s]} &=&1 \ \mathrm {[kW]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
であるから,両辺の単位に \ \mathrm {[s]} \ をかけると,
\begin{eqnarray}
1 \ \mathrm {[kJ]} &=&1 \ \mathrm {[kW\cdot s]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
となり,両辺に \ 1 \ \mathrm {[h]}=3 \ 600 \ \mathrm {[s]} \ を考慮して, \ 3600 \ をかけると,
\begin{eqnarray}
3 \ 600 \ \mathrm {[kJ]} &=&1 \ \mathrm {[kW\cdot h]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
となります。
3.物質量 \ \mathrm {[mol]} \
物質量 \ \mathrm {[mol]} \ はアボガドロ定数 \ N_{\mathrm {A}}≒6.02\times 10^{23} \ \mathrm {[個]} \ を基準とした原子の量のことで,感覚的にはダースのようなイメージを持つと良いかと思います。
物質量に原子量をかけたものが質量となり,例えば原子量 \ 12 \ の炭素が \ 1 \ \mathrm {[mol]} \ あるときの質量は \ 12 \ \mathrm {[g]} \ ( \ 1 \ \mathrm {[kmol]} \ あるときの質量は \ 12 \ \mathrm {[kg]} \ )となります。
また,気体に関しては \ 1 \ \mathrm {[mol]} \ の気体の標準状態の体積は \ 22.4 \ \mathrm {[l]} \ ( \ 1 \ \mathrm {[kmol]} \ の気体の標準状態の体積は \ 22.4 \ \mathrm {[m^{3}]} \ )であり,これは水素,酸素,空気,二酸化炭素等物質を問わずすべて同じ量となります。
【解答】
(a)解答:(3)
\ P_{\mathrm {n}}=600 \ \mathrm {[MW]} \ で \ 1 \ \mathrm {h} \ 運転した際の発電量は \ W=600 \ \mathrm {[MW\cdot h]} \ であるから,これを熱量換算した \ Q_{\mathrm {o}} \ \mathrm {[kJ]} \ は,ワンポイント解説「2. \ \mathrm {[kJ]} \ と \ \mathrm {[kW\cdot h]} \ の変換」の通り,
\begin{eqnarray}
Q_{\mathrm {o}} &=&3 \ 600 W \\[ 5pt ]
&=&3 \ 600 \times 600 \times 10^{3} \\[ 5pt ]
&=&2.16 \times 10^{9} \ \mathrm {[kJ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
となる。また, \ 1 \ \mathrm {h} \ 運転した際の石炭消費量は \ B=150 \ \mathrm {[t / h]} \ であり,石炭発熱量が \ H=34 \ 300 \ \mathrm {[kJ / kg]} \ であるから,これを熱量換算した \ Q_{\mathrm {i}} \ \mathrm {[kJ]} \ は,
\begin{eqnarray}
Q_{\mathrm {i}} &=&BH \\[ 5pt ]
&=&150 \times 10^{3}\times 34 \ 300 \\[ 5pt ]
&=&5.145 \times 10^{9} \ \mathrm {[kJ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
となる。よって,熱効率 \ \eta \ \mathrm {[%]} \ は,
\begin{eqnarray}
\eta &=&\frac {Q_{\mathrm {o}}}{Q_{\mathrm {i}}}\times 100 \\[ 5pt ]
&=&\frac {2.16 \times 10^{9}}{5.145 \times 10^{9}}\times 100 \\[ 5pt ]
&≒&42.0 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
と求められる。
(b)解答:(4)
\ 1 \ 日に消費する燃料消費量 \ B_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[t]} \ は,
\begin{eqnarray}
B_{\mathrm {m}} &=&24B \\[ 5pt ]
&=&24\times 150 \\[ 5pt ]
&=&3 \ 600 \ \mathrm {[t]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
であるから,そこに含まれる炭素成分 \ B_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[t]} \ は,
\begin{eqnarray}
B_{\mathrm {C}} &=&0.7\times B_{\mathrm {m}} \\[ 5pt ]
&=&0.7\times 3 \ 600 \\[ 5pt ]
&=&2 \ 520 \ \mathrm {[t]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
となる。これより,炭素の物質量 \ N_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[kmol]} \ は,
\begin{eqnarray}
N_{\mathrm {C}} &=&\frac {B_{\mathrm {C}}}{12} \\[ 5pt ]
&=&\frac {2 \ 520\times 10^{3}}{12} \\[ 5pt ]
&=&210 \ 000 \ \mathrm {[kmol]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
であり,反応式 \ \mathrm {C}+\mathrm {O}_{2}→ \mathrm {CO}_{2} \ より,反応する炭素の物質量と発生する二酸化炭素の物質量は等しいことから,発生する二酸化炭素の物質量 \ N_{\mathrm {CO_{2}}} \ \mathrm {[kmol]} \ は,
\begin{eqnarray}
N_{\mathrm {CO_{2}}} &=&N_{\mathrm {C}} \\[ 5pt ]
&=&210 \ 000 \ \mathrm {[kmol]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
となる。以上から,発生する二酸化炭素の重量 \ W_{\mathrm {CO_{2}}} \ \mathrm {[t]} \ は,
\begin{eqnarray}
W_{\mathrm {CO_{2}}} &=&\left( 12+16\times 2 \right) N_{\mathrm {CO_{2}}} \\[ 5pt ]
&=&\left( 12+16\times 2 \right) \times 210 \ 000 \\[ 5pt ]
&=&9.24 \times 10^{6} \ \mathrm {[kg]} → 9.24 \times 10^{3} \ \mathrm {[t]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
と求められる。