《機械》〈直流機〉[R06上:問1]直流機の原理及び電機子反作用に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,直流機に関する記述である。

直流機では固定子と回転子の間で直流電力と機械動力の変換が行われる。この変換を担う機構の一種にブラシと整流子があり,これらを用いた直流機では通常,界磁巻線に直流の界磁電流を流し,\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)を回転子とする。
このブラシと整流子を用いる直流機では,電機子反作用への対策として補償巻線や補極が設けられる。ブラシと整流子を用いる場合には,補極や補償巻線を設けないと,電機子反作用によって,固定子から見た\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)中性軸の位置が変化するために,これに合わせてブラシを移動しない限りブラシと整流子片との間に\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)が生じて整流子片を損傷するおそれがある。なお,小形機では,補償巻線と補極のうち\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)が一般的に用いられる。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  界磁  &  電気的  &  火花  &  補償巻線  \\
\hline
(2) &  界磁  &  幾何学的  &  応力  &  補極  \\
\hline
(3) &  電機子  &  幾何学的  &  応力  &  補償巻線  \\
\hline
(4) &  電機子  &  電気的  &  火花  &  補償巻線  \\
\hline
(5) &  電機子  &  電気的  &  火花  &  補極  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

直流機の原理及び電機子反作用に関する問題です。
直流機の電機子反作用とその対策は電験でも出題されやすい内容で,直近の令和5年下期問1でも出題されています。計算問題は出題されないので,ワンポイント解説で説明している内容は覚えておきましょう。
本問は平成28年問2からの再出題となります。

1.直流機の電機子反作用
直流機は,図1に示すように,界磁電流により作られる界磁磁束に電機子電流により発生する磁束が合成され,磁束が強め合う部分と磁束が弱め合う部分が発生します。これにより,界磁磁束に乱れが生じます。これを電機子反作用と言います。電機子反作用により以下の現象が発生します。
①主磁束の減少
 強め合う部分では磁気飽和により磁束はそれほど強くならず,弱め合う部分では磁束が弱くなるという交差磁化作用が発生するため,全体として磁束が減少します。
②電気的中性軸の移動
 磁束分布が乱れることで,電気的中性軸が発電機では回転方向と同方向,電動機では逆方向に移動します。
③整流子片での火花の発生
 磁束分布が乱れ,整流子片に起電力が生じ,整流子片間にアークが生じやすくなります。

2.直流機の電機子反作用の対策
直流機の電機子反作用の対策として,補償巻線と補極があります。
①補償巻線
電機子電流に流れる電流の近くに逆方向の電流を流すことで,電機子巻線が作る磁束を打ち消します。具体的には,磁極片に巻線を施し,電機子巻線と直列に接続する方法がとられます。一般に構造が複雑なので,大形機で採用されます。

②補極
主磁極とは別に,幾何学的中性軸上に磁極を設けます。これにより幾何学的中性軸上の磁束を打ち消し,整流時のリアクタンス電圧も打ち消します。一般に構造が簡単なため,小形機で採用されます。

【解答】

解答:(5)
(ア)
直流機で通常回転するのは電機子です。ただし,近年は永久磁石を用いた回転界磁形のブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータの出題も多いので,覚えておいて下さい。

(イ)
ワンポイント解説「1.直流機の電機子反作用」の通り,電機子反作用は電気的中性軸が変化するもので,幾何学的に位置が変わるということはありません。

(ウ)
ワンポイント解説「1.直流機の電機子反作用」の通り,電機子反作用により,ブラシと整流子の間に火花が生じるおそれがあります。

(エ)
ワンポイント解説「2.直流機の電機子反作用の対策」の通り小形機では構造が簡単な補極,大形機になると補償巻線が一般的に用いられます。