【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
図1は,直流電圧源から単相インバータで誘導性負荷に交流を給電する基本回路を示す。負荷電流\( \ i_{\mathrm {o}}\left( t \right) \ \)と直流側電流\( \ i_{\mathrm {d}}\left( t \right) \ \)は図示する矢印の向きを正の方向として,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 各パワートランジスタが出力交流電圧の\( \ 1 \ \)周期\( \ T \ \)に\( \ 1 \ \)回オンオフする運転を行っている際のある時刻\( \ t_{\mathrm {0}} \ \)から\( \ 1 \ \)周期の波形を図2に示す。直流電圧が\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)のとき,交流側の方形波出力電圧の実効値として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) \( \ 0.5E \ \) (2) \( \ 0.61E \ \) (3) \( \ 0.86E \ \) (4) \( \ E \ \) (5) \( \ 1.15E \ \)
(b) 小問(a)のとき,負荷電流\( \ i_{\mathrm {o}}\left( t \right) \ \)の波形が図3の(ア)~(ウ),直流側電流\( \ i_{\mathrm {d}}\left( t \right) \ \)の波形が図3の(エ),(オ)のいずれかに示されている。それらの波形の適切な組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) (ア)と(エ) (2) (イ)と(エ) (3) (ウ)と(オ)
(4) (ア)と(オ) (5) (イ)と(オ)
【ワンポイント解説】
方形波の実効値及び単相インバータのメカニズムを理解していないと解けない問題です。
あまり出題されない方形波の実効値の内容もあるので★5か迷いましたが,平成24年に(b)と同様な問題があるので,★4としました。3種としては難易度が高い問題であると思います。
1.方形波の平均値及び実効値
方形波の平均値及び実効値は以下のように求められます。いずれも積分計算を伴うので3種受験時には結果を覚えていれば問題ありません。
①平均値
瞬時値が図4で表される方形波の平均値\( \ E_{\mathrm {av}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E_{\mathrm {av}} &=& \frac {1}{\pi}\int ^{\pi}_{0} E \mathrm {d}\left( \omega t\right) \\[ 5pt ]
&=& \frac {E}{\pi}\left[ \omega t \right] ^{\pi}_{0} \\[ 5pt ]
&=& \frac {E}{\pi}\left( \pi \right) \\[ 5pt ]
&=& E \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められます。
②実効値
瞬時値が図4で表される方形波の実効値\( \ E_{\mathrm {e}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E_{\mathrm {e}} &=& \sqrt {\frac {1}{2\pi} \left\{ \int ^{\pi}_{0}E^{2}\mathrm {d}\left( \omega t\right) +\int ^{2\pi}_{\pi}\left( -E\right) ^{2}\mathrm {d}\left( \omega t\right) \right\} } \\[ 5pt ]
&=& \sqrt {\frac {E^{2}}{2\pi} \left\{ \int ^{\pi}_{0} \mathrm {d}\left( \omega t\right) +\int ^{2\pi}_{\pi} \mathrm {d}\left( \omega t\right) \right\} } \\[ 5pt ]
&=&\sqrt {\frac {E^{2}}{2\pi}\left( \pi-0+2\pi -\pi \right) } \\[ 5pt ]
&=& \sqrt {E^{2}} \\[ 5pt ]
&=& E \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められます。
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【解答】
(a)解答:(4)
\( \ \mathrm {S}_{\mathrm {1}} \ \)及び\( \ \mathrm {S}_{\mathrm {4}} \ \)がONのとき,負荷にかかる電圧は正の電圧であり,\( \ \mathrm {S}_{\mathrm {2}} \ \)及び\( \ \mathrm {S}_{\mathrm {3}} \ \)がONのとき,負荷にかかる電圧は負の電圧である。したがって,出力電圧は図5のようになる。
ワンポイント解説「1.方形波の平均値及び実効値」の通り,最大値が\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)の方形波の実効値は\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)と求められる。
(b)解答:(1)
パワートランジスタの各状態が変化した時の電流の流れを図1-1~図1-4に示す。
まず,\( \ \mathrm {S}_{1} \ \)と\( \ \mathrm {S}_{4} \ \)がONとなり,十分時間が経過すると,図1-1のように電流が流れる。
次に,\( \ \mathrm {S}_{1} \ \)と\( \ \mathrm {S}_{4} \ \)がOFFとなり,\( \ \mathrm {S}_{2} \ \)と\( \ \mathrm {S}_{3} \ \)がONになると,図1-2のように,リアクトルに蓄えられているエネルギーが消費され,電流が還流ダイオードを流れ,電源に戻るような流れとなる。
その後,時間が経過すると,図1-3のように\( \ \mathrm {S}_{2} \ \)と\( \ \mathrm {S}_{3} \ \)のパワートランジスタを電流が流れ,負荷に流れる電流の向きが逆向きになる。
再び,\( \ \mathrm {S}_{2} \ \)と\( \ \mathrm {S}_{3} \ \)がOFFとなり,\( \ \mathrm {S}_{1} \ \)と\( \ \mathrm {S}_{4} \ \)がONになると,図1-4のように,リアクトルに蓄えられているエネルギーが消費され,電流が還流ダイオードを流れ,電源に戻るような流れとなる。その後,図1-1のようになり,以後繰り返す。
以上を満たす負荷電流\( \ i_{\mathrm {o}} \ \)の波形は(ア),直流電流\( \ i_{\mathrm {d}} \ \)の波形は(エ)となる。